夏がやってくれば、室礼を涼やかな感じに演出してゆきます。風鈴を吊り下げたり、金魚鉢を置いたり。炎熱の庭やベランダには打水をします。庭の草木も人間も、ともに生き返る生活習慣、暮らしの知恵です。木綿地で仕立てた着物は浴衣。裏地がないので涼しく、素足に下駄を履いて出かけます。また6月前後には各地で蛍狩、蛍見が盛んになります。
そして真夏の夜空を彩るものは打上花火。江戸時代からこの大花火は人びとのたのしみでしたが、現在の日本は花火列島と化していて、全国津々浦々で趣向を凝らした花火大会が競って催され、地元の住民とともに、里帰りの人びと、観光客で賑わいます。さらに、日本列島にはいたるところに大小の滝が懸かっています。日光の華厳の滝、和歌山の那智の滝をはじめ、各地の滝は涼を求めて、滝見に集まる人びとで活況を呈します。滝見茶屋という休み処や滝見宿もあります。
そして秋がやってきます。花見、花狩に対して紅葉狩の季節。色づいた美しい楓その他の木々が山や渓谷で人びとを待っています。歴史のある古社寺は多く紅葉の名所で、古い仏像や工芸美術品とともに、古社寺巡りの旅人の心をとらえます。月見、観月も行われます。同時に秋はマツムシ、スズムシなど妙なる声を響かせてくれる虫の音をたのしむ虫聴きの会が開かれ、自宅でもスズムシを飼って、終夜その美声を堪能する人びとも多いようです。