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おそらく世界で最も著名なプログラマーの一人でありながら、多くの日本人にとっては無名に等しい人物、それが奥一穂さん(27歳)だ。奥さんは東京大学在学中の1997年夏、若冠20歳のときにPDA(携帯情報端末)のパームOS用のWebブラウザソフト「パームスケープ」を開発し、インターネット上で無料公開した。やがてそれが日本やアメリカをはじめとする内外のPDA端末に搭載され、ブラウザの定番として世界的に広まっていった。アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)が発行する技術専門誌「テクノロジー・レビュー」は、2002年に奥さんを「世界の若きトップイノベータ100人(TR100)」の一人に選出し、その才能を高く評価している。
「パームスケープを開発した時はそういうものがビジネスになるとは思ってもいなかったんです。当時はPDAができたものの、ブラウザがなかった。それで当然ブラウザがいるだろうと思って作ってみたんです。それを自分のホームページで公開したら、パームユーザーのメーリングリストに情報が流れて、いつのまにか世界的に広まったんです」と奥さんは懐かしそうに語る。
奥さんとコンピュータとの出会いは小学校低学年の時。父親の仕事の関係でオーストラリアにいた奥さんは、学校の授業で教育用の簡易プログラミング言語を学習したのが始まりだという。「その後は、小学6年生のときに父がパソコンを買ったのでそれを使わせてもらったり、中学のときには母が買ったMacintoshを使ってプログラムを作ったりしていました。中学高校時代、私は室内楽のクラブ活動をしていて、同時にコンピュータ同好会にも入っていたんですが、パソコンに向かっていたのは1日平均30分くらいでしょうか。それほど夢中になっていたというわけでもないんですよ」
現在、奥さんは自身で会社を設立し、携帯電話やPDAを用いて自宅のパソコンに接続し、音楽やテレビを視聴したり写真を転送したりできるサービス「Edio」の企画や開発、運営をしている。「今後も通信を使っていろいろと便利なことを実現していきたい」という奥さんは、社長になった現在でも1日の大半を開発に費やしているという。その優れた頭脳から次にどんなアイデアが生まれてくるのか、今、世界が注目している。
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