自分の意図を超えた“自然の力”こそが魅力
備前焼作家 藤原 和さん
 日本の六古窯のひとつである岡山県の備前焼。きめ細かな黒土で器を作り、釉薬をかけず、1000℃以上の高温でじっくりと焼き締めていく。その時、窯の中で土や燃料の割り木の灰が思わぬ変化を起こし、器に深い味わいを与える。この偶然が生み出す美ともいえる「窯変」こそが、備前焼の魅力である。
「まさに自然の力ですよね。備前は、“自然のやきもの”なんですよ」と、藤原和さんは話す。祖父の啓さん、父の雄さんがともに「人間国宝」という備前焼の名工の家に生まれた三代目だ。
 もちろん、自分では作りたい器のイメージはしっかりと持っている。
「この器はこういう色になるといいな。こんなふうに焼き上がってくれるといいな。そう考えて、いつも窯に入れるんです」
 これまでの経験やデータをもとにして、窯のどの場所にその器を置くのか、燃料の割り木はどれくらい燃やすのか、火はどうまわしていくのか。あらゆることを考える。
「いわば、自分と窯との闘いですよ」
 窯入れすると、12昼夜から13昼夜は火を焚き続ける。その間、ずっと窯の側にいる。特に最後の二日間は一睡もしない。
「パチパチという割り木のはぜる音や、ゴーッと窯に吸い込まれる風の音を聞いているんです。ときどき、もう少し温度を上げようと考えて割り木を足したりする。そんなふうに火と対話しながら焼いていくんです」
 そうして迎える窯出し。なかなか思いどおりにはいかない。しかし、たとえイメージと違っても失敗だとは思わないという。
「そこに自然のエネルギーを感じて、ああ、この器はこんなふうに仕上がりたかったのかと納得します。そのたびに、やはりやきものは作ろうと思って作るものではなく、自然に生み出されてくるものなんだなと改めて実感しますよね」
 その作意を超えた自然の作用に、私たち日本人は魅せられてしまうのにちがいない。

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