15世紀から16世紀は、日本全国で戦乱に明け暮れた「戦国時代」だった。相次ぐ戦争のため瀬戸の陶工たちは北へ山を越えて美濃（岐阜県南部）へ逃れた。陶工たちはこの地域で黄瀬戸、瀬戸黒、志野や織部など、日本独自のやきものを生む快挙を成し遂げることになる。いっぽうこの時代、茶の湯が広く人びとの心をとらえる。12世紀末に中国から伝わった喫茶の習慣は、16世紀には、ただお茶を飲むだけでなく、客をもてなす心遣いや作法とともに、主人の美意識を表現する総合的な芸術にまで高められていった。

　美濃で焼かれた陶器の黄色、白、黒、緑などの色彩には、中国や朝鮮の陶磁の影響がうかがわれるが、左右非対称の造形や抽象文様などは諸外国には見られない独創性があり、茶の湯のための茶碗、皿、香合、向付などのほか、花入れや燭台などさまざまな用途の器も生まれた。茶の湯はやきものに、日本人の美意識を結集させたのだ。日本が統一される16世紀末の桃山時代は、まさに日本のやきものの一大転換期でもあった。

　同時期、朝鮮半島から再び技術がもたらされる。豊臣秀吉の出兵を機に、茶の湯に情熱を傾けていた武将たちは朝鮮半島から多くの陶工を連れ帰り、九州を中心とした各地に窯場を築かせた。唐津、上野、高取、薩摩、萩などだ。なかでも唐津焼は群を抜いて多彩で、茶碗や花入だけでなく、日常雑器も大量に焼かれ、唐津から日本国内へ向け出荷された。

　磁器が誕生したのは、江戸時代初めの17世紀であった。日本の陶磁史に特筆される大きな革新の波は、朝鮮人陶工による磁器の焼成から始まる。やがて有田の泉山に白磁鉱が発見され、薄くて軽くて丈夫、白い肌に青い染付の瑞々しさは、たちまち日本中を席捲した。伊万里港から積み出されたことから、これらは伊万里焼と呼ばれた。最初は朝鮮の磁器の影響があったが、やがて厖大に輸入されていた中国磁器に徹底的に学びながら、大きく前進する。酒井田柿右衛門は赤絵の技法に成功し、透きとおるような白い肌に華麗な色絵を描いた。

　東洋の美に魅了されたヨーロッパの王侯貴族は争って伊万里を求めた。そのうえ、ドイツのマイセン、オランダのデルフトをはじめヨーロッパ各地で、日本の伊万里や柿右衛門を写し始めたのであった。日本のやきものの最も華々しい時代といえる。

　いっぽう京都では、17世紀に野々村仁清が現れ、京都ならではの王朝趣味にあふれたデザインと、色絵の世界を作り上げた。続いて尾形乾山、奥田頴川、青木木米らが優美な京焼の世界を織り成し、今日の清水焼の基礎となった。

　19世紀になると、日本の各地で陶業は飛躍的に発展した。中国・明代末期の呉須赤絵や祥瑞など日本人好みのデザインはすっかり定着し、今日まで和食器の中に生きている。また19世紀後半にはパリの万国博覧会出品をきっかけに、伊万里や薩摩、九谷などの陶磁器が再びヨーロッパに大きな影響を与え、日本趣味の流行は、やがてアールヌーボーを生み出すこととなる。

　日本のやきものの展開は、朝鮮半島や中国の大きな影響のもとに発展してきたが、それは、日本人の美意識と暮らし方を反映しながら、日本独自のやきものを作り上げてきた歴史でもあったのである。