名古屋の名物と聞いて、まず思い浮かべるのは、「赤味噲」という味噲を使った料理である。中でも、太く打ったうどんを赤味噲でグツグツ煮込んだ「味噲煮込みうどん」は最も有名で、味噲汁に麺を入れた家庭料理が始まり、といわれている。味噲汁は日本人が毎日のように飲むスープだが、名古屋の家庭では、赤味噲で作るのが一般的なのだ。他にも、豚肉のカツレツに味噲だれをかけて食べる「味噲カツ」、牛や豚のスジ肉などを煮込んだ「どて煮」などにも、赤味噲が使われている。
 味噲は、大豆、米、麦などを原料とした発酵食品だが、赤味噲は大豆と食塩だけで造られている。大豆は米や麦よりたんぱく質や脂質が多いので、発酵すると茶褐色になり、風味が強くなる。このため赤味噲は他の味噲に比べて少し渋みがあり、旨みが強い。濃厚な味わいの赤味噲が、うどんや肉の味を引き立てるので、さまざまな“名古屋名物”が生まれたのだろう。
 また、名古屋の人が愛するものに、喫茶店がある。喫茶店は日本のどこでも見られるもので、欧米のカフェに当たる。コーヒーや紅茶などを注文し、ひとときの憩いをとる場所である。ところが、名古屋の喫茶店はサービス満点。他の都市の喫茶店でコーヒーを注文しても、出るのはコーヒーだけだが、名古屋では茶菓がつくのが当たり前だ。さらに名古屋気分を味わいたいなら、午前中、早い時間に出かけて“モーニングセット”を注文してみることだ。名古屋では、通常の喫茶店のモーニングセット――コーヒー、トースト、ゆで卵といったもの――に加え、サラダやソーセージ、ジュースなどもついてボリューム満点。中には、うどんを一杯サービスしてしまうというところすらある。
 エビにパン粉の衣をつけて揚げた「エビフライ」も、名古屋の人がこよなく愛する料理。庶民的な食堂では、定食に必ずといっていいほどエビフライがつく。また、エビの天ぷらをおにぎりの具にした「天むす」も名物で、エビは名古屋人の好物といえる。
 他にも、名古屋独特の食べものは多い。鰻丼といえば、ふつうは鰻の蒲焼きをご飯の上に載せたものだが、これを刻んでご飯に混ぜ込んだ「ひつまぶし」。トーストに小豆餡をはさんだ「小倉トースト」など、特殊な素材を使うのではなく、どこにでもある素材を少し捻ったやり方で料理したものが多い。
 最近は、味噲カツや天むすの専門店が名古屋以外の都市にもできつつあるが、古くから全国的に認知されていた名物に、「名古屋コーチン」という地鶏がある。これは130年ほど前に開発された肉質の優れた鶏で、卵もよく産む。肉に締まりがあって味がよく、高級鶏肉としてその名が高い。
 名古屋名物は手頃な価格で楽しめるものが多いのも特徴。もし、名古屋を訪ねる機会があったら、独特の食べものを、ぜひ、心ゆくまで楽しんでいただきたい。

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