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いまどき日本列島
京都発、きれい好きの必需品
文●坂上恭子 写真●武田憲久
今、若い女性を中心に、あぶらとり紙を愛用する人が増えている。あぶらとり紙は、ほぼ正方形で手のひら大の薄い紙。化粧を落とすことなく顔の脂を取り除ける、なかなかのすぐれものだ。
あぶらとり紙は、今から90年ほど前、京都の化粧小物の老舗「よーじや」で生まれたといわれている。
「あぶらとり紙が生まれたのは先々代の時代。芝居の役者に『ドーランを塗ると顔に脂が浮いて困る』と相談を持ちかけられて、脂を取るための紙を提供したのが始まりです」(よーじや・海東忠彦さん)
もともとあぶらとり紙は、金箔を薄く打ち延ばす際に、金箔を挟む金箔打紙として使われた和紙。寺社が多い京都では、建物の装飾などに使用するため金箔の需要が高く、金箔打紙も豊富にあった。この金箔打紙は、布などに比べて繊維が細かく、吸収力が高いため、脂だけをきれいに取るのにうってつけだったのだ。
とはいえ、当時のあぶらとり紙は、顔全体を覆うほどの大きさ。利用する人もほとんどが役者だった。しかし1921年、手帳ほどの大きさに裁断したあぶらとり紙を発売。すると、携帯にも便利になり、役者だけでなく舞妓や芸者など花街の女性たちの間にも広まった。その後改良を重ね、現在の使いやすい手のひら大になった。
それからしばらくは、ごく一部の人に愛用されていたにすぎなかったが、1990年代の初めに、雑誌やテレビで取り上げられ、人気に火がついた。この頃、若者の間で、清潔さや美しい肌であることが注目され始めたことも関係しているだろう。顔の脂はニキビや吹き出物の原因にもなる。だから、脂浮きした肌を嫌悪する若者たちがあぶらとり紙に飛びついたのだ。
この思わぬ流行により、発祥の店「よーじや」の来客数は、以前の10倍以上に跳ね上がり、京都の土産物としても大人気。大手化粧品メーカーも追随し、今では男性向けの商品も販売されているほど。きれい好きの日本人に合ったあぶらとり紙は、単なる流行を超えて、暮らしに欠かせないものとして定着しつつあるようだ。
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