岡村さんはそこで、研究の方向を二つに絞った。キャパシタの他の要素を一切犠牲にしてさらにエネルギー密度を上げることと、犠牲にした分は、周辺の電子回路の性能向上で補うことの2点だ。
「キャパシタの性能(エネルギー密度)を5倍にし、周辺の電子回路の改良で4倍の性能向上ができれば、20倍の性能になる。エネルギー密度より内部抵抗を下げることが重要だという、当時、主流だった研究とは正反対の方向でしたが、シミュレーションしてみると、実にうまくいくことがわかりました」
 鉛蓄電池に匹敵する電力が蓄えられ、しかも、電気を電気のまま蓄えるため充放電時間が短く、寿命が長い、ECaSSという蓄電システムの完成だった。
 その結果、1990年代の末から、岡村さんの技術に基づいて、電機メーカーはメンテナンス不要の無停電電源装置を実現し、自動車メーカーは排気ガス中の微粒子を大幅に減らすエンジン・電気ハイブリッドのトラックやバスを完成させている。最近では、ホンダの完全無公害の燃料電池車にも搭載された。
 しかし、技術革命はまだまだ続く。2003年10月、岡村さんの技術指導で研究を進めていた日本電子(株)が、さらにキャパシタを高エネルギー密度化することに成功したのだ。「ナノゲート・キャパシタ」と呼ばれるこの製品に蓄えられる電力は、同じ重さの鉛蓄電池の2〜3倍で、小型小出力用で普及しているニッケル水素電池を凌ぎ、エネルギー密度で言うと実用化されている電池の中で最も高いリチウムイオン電池に迫る。
 ECaSSの進化がさらに続けば、既存のガソリン自動車に電気自動車が取って代わり、「家庭用蓄電庫」といったシステムも実現可能となる。その時、人びとは太陽光や風力、燃料電池といった無公害のエネルギー源から電気を得て、蓄電庫に蓄えつつ使うことになるはずだ。大発電所も、送電ロスがある送電線も不要になる。キャパシタの秘める可能性と未来は、実に大きく豊かなのだ。

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