お汁粉は、小豆を水と砂糖で煮た甘いスープに焼いた餅を加えて、熱いうちにいただく料理だ。日本では最も知られている伝統的なスイーツのひとつで、主として昼食と夕餉の間、小腹が空いた時の「おやつ」としてよく食べられる。お汁粉には、豆の粒をそのまま残したものと、漉して豆の皮を取ったものがあり、西日本では、前者を「ぜんざい」と呼ぶことが多い。通年ある食べものだが、熱いうちにいただくので、寒い季節にはひときわおいしく感じられる。
 小豆は、2000年ほど前の遺跡から出土していることから、この頃までには中国から渡来し、日本でも栽培されていたと考えられている。中国では、6〜7世紀頃の書『荊楚歳時記』に、厄除けのため、冬至の日に小豆が食べられていたことが記載されている。この習慣もやがて日本に伝わり、小豆は年中行事や儀式の日などに特別に食べるものとして定着した。
 小豆をスイーツに仕立てて盛んに食べられるようになったのは、ずっと時代が下り、砂糖の生産が本格化した18世紀末以降のことだ。1852年に完成した随筆『守貞漫稿』には、お汁粉について「江戸では、小豆の皮を取り、白糖か黒糖を加えて切り餅を煮る。名付けて汁粉という。京坂(京都や大阪)では、皮を取ったものは汁粉、または漉し餡のぜんざいという」と書いてある。この頃にはお汁粉は日本全国で食べられるようになり、名称の違いもあったということなのだ。
 小豆と砂糖という、比較的安価で入手しやすい材料でできることから、家庭で作る伝統的なおやつとして親しまれてきたお汁粉。しかし、手間と時間がかかるため、江戸時代末期(19世紀半ば)から商品として売られてきた歴史も併せ持つ。現代の喫茶店にあたる甘味処では、お汁粉は欠かせぬ一品だったし、店商いのほかにも、夜、木箱を担いで町を流して売るお汁粉屋も出るほど人気があった。このように、古くから親しまれてきたお汁粉だが、最近では、容器にお湯を注ぐだけ、温めるだけ、といった出来合いの即席商品もたくさん売られるようになった。
 お汁粉の調理には、手間を惜しまないことが大切である。小豆にはタンニン成分の「渋」が含まれており、これが残ると味わいが悪くなる。小豆を煮た後、一度ザルに揚げて、流水でよく洗う。再び煮た小豆に水を加え、泡とともに上澄み液を捨てる。さらに煮て、アクを取るなど、手をかけることがおいしさに繋がる。
 お汁粉には焼いた餅を加えて食べるが、これは焼いた餅の香ばしさと小豆の風味がよく合うからで、しかもスープ状のものに異なる食感のものが加わるため単調にならない効果もある。餅が入ってボリュームもあり、おやつにはうってつけだ。時間に余裕のある休日にじっくりと取り組んで、伝統の味を楽しみたい。

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