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メンチカツは、牛や豚のひき肉にたまねぎを混ぜてこね、パン粉などの衣をつけ油で揚げる料理だ。「メンチ」の語源は英語のminceで、ひき肉の意味である。
日本で、肉食が一般的になったのは明治時代(19世紀後半)のこと。17世紀前半から続いていた鎖国が終わると同時に、西洋料理や肉食の習慣が、他のあらゆる西洋の文物とともに日本に流れ込んできた。そして、伝えられた西洋料理が一般に広まる時には、原型のままではなく、和洋を折衷した日本風の西洋料理「洋食」に、次々に生まれ変わっていった。メンチカツも、当時の日本で生まれた洋食の、傑作のひとつといっていいだろう。
1896年、東京・銀座にある『煉瓦亭』という洋食屋で、豚肉に衣をつけて油で揚げる、後に「豚カツ」と呼ばれて広まった料理が誕生した。これはパン粉の衣をつけてフライパンで焼き上げる豚のカツレツを、手早く調理できるように改良したもの。これが人気商品となり、続いて肉や魚などさまざまな素材に衣をつけ、揚げる料理を試していった。そのうちの一品としてメンチカツが生まれたという説が有力である。
「この頃『メンチボール』という、ひき肉をまとめて焼く料理があり、それが肉の揚げ物のカツと結びついて、メンチカツの名前が生まれたのではないでしょうか」と、煉瓦亭の三代目ご主人の木田明利さんは話す。
メンチカツは、一度ひいた肉をまとめて調理するので柔らかく、食べやすい。しかも、肉の中で、ひき肉は最も安価なものである。現在は、家庭で作られるほかにも、町の精肉店やスーパーマーケットに並ぶ惣菜の代表的な一品になっており、庶民の食卓に上る頻度は高い。
メンチカツを調理する時のポイントは、まず適度に脂のあるひき肉を用意すること。そして、材料をよく練った後は、叩きつけるようにして空気を抜いておくと、揚げた時に割れ目が出ない。衣にするパン粉は、乾燥したものでなく、食パンを細かくひいた生のパン粉を使った方が、さっくりと口当たりよく仕上がる。また、加熱時には完全に火を通さないで、早めに油から引き上げ、余熱で中心まで温めるようにすることが大切。こうすることによって、ナイフを入れた時、肉汁が滴るようなおいしいメンチカツが出来上がる。
日本では、出来上がりに溶き芥子を添え、市販のウスターソースをかけて食べるのが一般的だが、塩、レモン汁、マスタードなどで味を調えて食べても楽しめる。いずれにしても、揚げたての熱々を食べるのがメンチカツの最もおいしい食べ方である。
揚げ鍋ひとつでできて、材料も入手しやすく、比較的安価にできるお惣菜、メンチカツ。おいしいばかりではなく、調理法を覚えておくと、何かと重宝する一品だ。
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