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また現在では、さまざまな絵が描かれた美術品として鑑賞されることが多い屏風も、もともとは部屋の仕切りや、風よけのための家具である。目的に応じた空間を作り出し、その上、装飾にもなって、使わない時はたたんでしまっておけるために重宝された。
日本人はこのように昔から、使ったものをきれいにたたんだり、重ねたりして片付けるという生活を送ってきた。そんな生活習慣、文化を背景に、「小さくまとめて、しまう」さまざまなものが作られていったと言えるのではないだろうか。
例えば、日本のすぐれた発明品のひとつである扇子。団扇と違い、折りたたむ機能を持ったことで、携帯性にも収納性にもすぐれた扇子は、12世紀頃から中国に輸出され、ヨーロッパの国々にまで広まっていった。
日本の着物は、まさしく「たたんでしまう」ものだ。直線裁ちの着物はかさばらず、しわにならないようにたためるので、箪笥や引き出しでたくさん収納できる。そして、小さなお菓子包みから長い酒瓶、大きな布団まで、何でも包める風呂敷。用が済んでしまえば、鞄と違って小さく折りたためる万能布だ。
「小さくたたんで大きく使う」、この日本人のすぐれた発想が生かされた最先端科学技術を紹介しよう。それは、1997年に宇宙科学研究所のロケットによって打ち上げられた、電波天文衛星「はるか」の電波望遠鏡に使われている技術だ。電波望遠鏡のパラボラアンテナは、直径10mもの大型構造物。これをどうやって宇宙空間に持っていくか。研究を重ねた結果、このアンテナを小さく折りたたんでロケットで打ち上げ、宇宙空間でアンテナを展開させることに成功した。
たたむ、重ねる、しまう、さまざまな技術。日本の収納の知恵は生活や伝統を背景に発達し、今も日用品から最先端科学技術にまで生かされている。
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