今に伝わる「江戸火消しの心意気」
鳶頭・山口政五郎さん 江戸消防記念会専務理事
 鳶の仕事は、建設現場の足場組みや、古い建物の解体などですが、江戸時代の鳶は、町の年中行事、冠婚葬祭、もめ事の処理など、「町の用務員」のようなこともしてました。
 当時の消防は、火事の延焼を防ぐために、火元周辺の家を壊す「破壊消防」です。家を壊すのは鳶の大得意の仕事。そのうえ鳶は、「この路地はどこへ抜ける、あの家には足の悪いお年寄りがいる」といった、町の情報をよく知っていました。この知識は消防活動に欠かせないと、鳶に火消しが任されたんです。だから、江戸の鳶は、建設の仕事と火消しの二つの天職を持っていたといえますね。
 徳川幕府が崩壊した後、消防の仕事は警察に組み込まれ、火消しは準公務員として、第2次世界大戦中まで活動を続けました。私も小さい頃から、火事になると、親父が半纏を着て駆けていく姿を見て育ちました。今の鳶は、消火活動はしてませんが、纏振りや梯子乗りなど、江戸の火消し文化をずっと継承し続けようと思っています。(談)

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