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江戸時代(17世紀初め〜19世紀中頃)の書籍の専門店・大屋書房では、鮮やかな色彩の浮世絵を扱っているし、矢口書店には演劇や映画の脚本やパンフレットなどが揃っている。かわいい豆本や美しい限定本なら吾八書房へ。このほか、歴史、政治、経済、法律、美術などの専門書店はもちろんのこと、音楽や書道、占い、マンガから児童書まで、個性的な専門店が集まっている。
しかし、見つけたい本、探している本があれば、店員に聞いてみるのが一番早い。どこの古書店を訪れたらよいか、親切に教えてもらえるはずだから。
「お客さんがどんな本を探しているのかは、お客さんとの対話でしかわかりません。外国の方も、片言でいいから日本語を話せるといいですね」と、田村書店の奥平晃一さん。インターネットで本を売買できる時代とはいえ、やはり、直接話をすることが接客では大切だという。
さまざまな古書店をはしごして歩いた後には、喫茶店で足を休めるのも楽しい。使い古されたテーブルや椅子に、ぼんやりと灯った照明……。そんな懐かしい雰囲気の店が集まっているのが、靖国通りと、すずらん通りに挟まれた細い路地。ラドリオ、さぼうる、リオなど、50年近い歴史をもつ店で、買ったばかりの古書を眺めながら、コーヒーを飲んでくつろぐひと時は、格別だ。
古書店街から少し外れて、靖国通りを東に進み、明大通りを越えると、本の街が一転して、「スポーツの街」に変わる。スキーやスノーボードを店先に並べた店や、登山用具の店を多く見かけるだろう。また、明大通りの西側には、明治大学の巨大な校舎・リバティタワーがそびえ、通りの反対側には、大勢の若者で賑わう「楽器の街」がある。ピカピカに磨かれたギターやキーボードがところ狭しと並べられた楽器店では、楽器を試しに弾いている人の姿も。
明大通りの坂を上りきったところにJR御茶ノ水駅、その東側には神田川に架かった聖橋がある。聖橋の南側、ロシア正教会のニコライ堂は、1891年に創建され、1923年の関東大震災後に修復された。当時のままの姿を残すニコライ堂は、長くこの界隈で親しまれ、鐘の音は、今も昔も、人びとの心を和ませ続けている。また、聖橋の北側には、儒教の祖とされる中国の孔子をまつった湯島聖堂がある。これらを繋ぐ橋であるため、「聖なる橋」という意味の名がつけられた。
古書の街・神田神保町の界隈は、「古くて、よいもの」を大切にしてきた街。ぶらぶらと歩いてみれば、日本人が大切に伝えてきた「よいもの」を、見て、聞いて、実感できるはずだ。
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