宇宙開発に活用されている日本の技術を紹介するに当たり、日本人初の宇宙飛行士であり、現在日本科学未来館の館長を務める毛利衛さんにお話を伺った。
 
 宇宙に行くのにまず必要なのは、“地球環境を持っていくこと”です。人間の暮らせない宇宙空間に行くのですから、生きるため、活動するために必要なものはすべて持っていかなければならない。空気、水を含めた生命維持装置、宇宙線から身を守るもの、遠く離れた地球との交信機器、それらを動かす莫大なエネルギー等、本当にいろいろなものが必要です。宇宙飛行は、多くの技術や人びとの支えがあって、初めて可能になるのです。もちろんそれは、宇宙開発全体に言えることです。
 アメリカのNASA(アメリカ航空宇宙局)には、世界中から最良の工業技術が集められています。それらは、効率面や安全性で高く評価されたもので、どこの国のものであるかは関係ない。“すぐれたもの”だからこそ採用されています。いいものには国境などないのです。すでに、日本企業の製品や部品も多く採用されていますが、NASAが見つけていないものが、日本にはまだたくさんあると思います。それは、宇宙船にかかわる製品や部品にとどまらず、例えば、宇宙食の味の向上や日用品の改良といった、宇宙で快適に過ごすために生かされる技術です。こういったものは、細やかな日本人の感性が存分に生かせると思います。
 そのためにも、今後、将来を担う若い人たちを育てる場が必要です。日本科学未来館は、参加体験型の展示や人との交流を通して先端技術に触れ、科学を身近に感じてもらうことを意図しています。ここでは、これから宇宙でどんな新しいことができるのか、といった可能性を探る目を養うこともできます。近い将来、新しい日本の科学技術を生み出すヒントを得て、さらには宇宙開発の分野に生かす人材が出てほしいと思います。

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