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今、日本の芸能界に新風を巻き起こしている「面白いアメリカ人」がいる。パトリック・ハーランさん(32歳)、芸名は「パックン」。日本人の吉田眞さんと組んだコンビ「パックンマックン」で漫才を演じ、一躍人気者となった。
漫才とは、19世紀末頃から続く日本の話芸のひとつで、通常、二人のコンビがこっけいな掛け合いをし、観客を笑わせるというもの。二人はそれぞれ「ツッコミ」役と「ボケ」役に分かれ、ボケ役が間抜けなことを言うと、ツッコミ役が頭を叩いて諫めたりする。パトリックさんはボケ役で、「外国人にとっては不思議に見える日本の常識」についてしゃべるのが、得意技のひとつだ。
「実は、アメリカ人は頭を叩かれると心底、怒ります。僕もそう。最初は、控室で殴り返してやろうかと思いました。でもボケ役は、やってみると本当に面白いんです。バカなふりをして、みんなが言いたくても言えない本音を、代わりに言ってあげることができる。つまり、“自由な表現者”なんです」
アメリカ合衆国コロラド州の生まれ。名門ハーバード大学で比較宗教学を学びながら、合唱団の会長を務めた。来日したのは、卒業時に行われた合唱団の「アジア公演ツアー」のためだった。
「その時、日本人のもてなしの素晴らしさに感動したんです。ただの学生である僕たちのために熱烈な歓迎会を開いてくれた。この国でなら暮らしていけるかもしれない、と思ったんです」
パトリックさんは、もともと俳優志望だった。しかし、故郷でハリウッドを目指すまでの自信はなく、将来について悩んでいた矢先だった。結局アメリカには帰らず、そのまま日本に残り、英会話学校の講師になった。
「最初は日本語のあいまいな表現に悩みました。僕に何をして欲しいのかもよく分からない。でも慣れて自分が使いこなせるようになると、とても便利で、手放せなくなりました」
例えば“よろしく”。英語では相手にはっきり何かを要求することになるが、日本語なら何気ない挨拶のようなもの。実現しなくても、お互いに傷つかない。こんなふうに面白さがわかるようになって、日本語はみるみるうちに上達した。
やがて、パトリックさんは俳優の夢を日本でかなえようと思い立つ。そして劇団に入ったが、芝居やテレビドラマにアメリカ人の役はほとんどない。そこで選んだのが、漫才師の道だった。
「最初は日本語にさらに磨きをかけたいと思って始めたのですが、テレビに出て、思いがけず有名になれたし、何より、やっていて楽しくなっちゃったんです」
現在は漫才のみならず、レポーターや英会話の先生としてのテレビ出演や、ラジオのディスクジョッキー、本の執筆などでも活躍している。東京都内のマンションに暮らしているが、休日も執筆活動に追われ、休む暇はないという。
「今はちょっと大変ですが、これを糧にして将来は是非、俳優として映画に出たいと思ってます。もちろん、この僕でなければならない主演映画でね」
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