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森は海の恋人
「牡蠣の森を慕う会」代表 畠山重篤さん
海は森とつながっている。海と森をつなぐ川の流域を、ひとつの生態系として見なければいけない――。
宮城県の気仙沼湾でカキの養殖業を営む畠山重篤さんが、海と森との関係を見直してみようと思ったのは、1984年にフランスに行ったことがきっかけだった。
フランス西部、ロアール川河口で養殖されるカキの素晴らしさ。干潟の潮だまりには、小魚や小動物が溢れていた。
「それは私が子どもの頃の宮城の海の豊かさそのままでした」
川の流域も見てまわった。上流には深い森がいくつも広がり、それらの森からは10本以上の支流がロアール川に注ぎこんでいた。
「海を豊かにするには、森や川が重要な働きをしているのかもしれない。そう思うようになったんです」
日本に帰ってから、畠山さんは気仙沼湾に注ぐ大川の源流の室根山に木を植えることを思い立った。「いい漁場を残すために、室根山に木を植えよう」と漁師仲間に呼びかけ、89年、実際に植林を始めた。
その一方、北海道大学に気仙沼湾の調査を依頼すると、気仙沼湾の生物を育む養分は、大半が大川によって運ばれる森の恵みだということもわかった。
すでに植えた木は3万本。ブナやミズナラなど約50種の落葉広葉樹だ。同時に、山の子どもたちや親たちを海に呼び、「海の体験教室」を開いてきた。
「川の源流の山に木を植えることは、流域に住む人の心にも木を植えることです。その両方に木を植えないとダメだと思うんです」
その言葉どおり、山の民と海の民の交流を通して、互いに森を守り、川の環境を大事にしていこうという意識が育ってきた。いま大川は宮城県で最も澄んだ川になり、気仙沼湾も生物の豊かさを誇っている。
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