森に依存し、森を守ってきた民族
 日本の森林が維持されているのは、樹木の生育に適する湿潤な温帯モンスーン気候に属していること、急峻な地形によって開発が行われにくかったことなどの自然条件によるところが大きい。そして、このような地形によって、森林の荒廃が直ちに洪水や土砂崩れといった自然災害をもたらすことを人びとが毎年のように経験し、森林を守る大切さを身をもって理解していたことがあげられる。さらに、日本の農業が水田稲作農業であったことも大きな理由の一つである。水田に引くかんがい用の水が、森林からつくり出されることを理解していた農家の人びとやその時々の権力者が、森林を大切に守ってきたことを忘れることはできない。
 また、鬱蒼とした森林や巨木を、神が宿り、あるいは神が降りてくる神聖な場所であると考えていたことの影響も少なくない。
 この結果、森林は人びとの生活や産業を営む上でなくてはならないものであるとの意識が育まれ、森林を守り、造り上げながら、さまざまな恩恵を末永く受けていこうとする知恵が生まれた。そして、森林から生産される木材を、無駄なく、その特性に応じてうまく使い分ける技術を育みながら、住居や身の回りに用いてきた。これは、森林の生産力の範囲内で木材を利用することの大切さを理解していたからである。

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