寒い冬の夜、眠る時の手軽な暖房器具として、日本人に古くから親しまれてきたのが湯たんぽだ。今ではすっかり電気毛布やエア・コンディショナーにとって代わられたが、体に優しく、環境に害を与えないので、今も愛好家は多い。
 使い方はいたって明快。60〜70℃に温めた湯を、容器の3分の2程度まで注ぐだけ。あとは、直接、肌に触れないように厚い布などで包み、布団の中へ忍ばせる。これで布団の中は一晩中ポカポカだ。中の湯は朝まで十分温かいので、洗顔や、食器洗いなどに使うこともできる。
 湯たんぽの原型は、そもそも中国で作られたものであったが、日本へは14〜15世紀頃に伝わり、少なくとも18世紀初めまでには、庶民の間に普及していたようだ。かつては陶器でできたドーム状のものが一般的で、滋賀県の信楽をはじめ、日本各地の窯場で盛んに焼かれていた。
 現在の日本人が「湯たんぽ」と聞いて思い浮かべるのは、トタン(鉄に亜鉛をメッキしたもの)でできた楕円形のものである。これは20世紀前半に普及し、現在まで広く使われている。表面にある波状の凹凸は、熱の放射を良くすると同時に、膨張や収縮による変形を防ぐ役割もある。1950年代には、年間100万個以上が生産されたが、今では電化製品に押され、最盛期の10分の1程度にまで落ち込んでいる。
 そんな湯たんぽが、手軽さから意外なところで役立っている。災害時の救援物資として、電気やガスの供給が止まった地域で大活躍したのである。1995年に日本の関西地方を襲った阪神・淡路大震災をはじめ、トルコ、中国などの被災地へも送られ、寒さに震える人びとに大変喜ばれた。湯たんぽの温もりは、人の心も温かくしてくれる。

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