東京から長野新幹線で1時間あまり。長野県東部にある軽井沢は、国際的な避暑地として名高い町だ。雄大な活火山、浅間山の南東側のふもとに広がる高原に位置し、標高は約950m。真夏でも平均気温が25℃を超えない、涼しく過ごしやすい気候に加え、首都圏から近いこともあり、夏になると別荘で過ごす避暑客のほか、多くの観光客で賑わう。
軽井沢は、17世紀から、江戸(現在の東京)と京都を結ぶ街道、中山道の宿場町として栄えた。その後、鉄道の発達とともに、宿場町としては、いったん廃れてしまった。
しかし、1887年、カナダ生まれのイギリス人宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーが軽井沢を訪れて一夏を過ごしてから、高級避暑地としての歴史が始まる。宣教師や外交官をはじめ、軽井沢の美しい自然や風土に魅せられた欧米人が続々と別荘を構えた。1893年には、それまで急勾配のため建設が遅れていた碓氷峠に鉄道が開通し、さらに避暑客が増え、宿泊施設も整備されるようになった。20世紀初めには、日本を代表する政財界人や作家、芸術家たちも数多く滞在する、華やかな社交場となったのである。
その舞台は、早くから別荘地として開けた旧軽井沢と呼ばれる地域だ。JR軽井沢駅の北に広がる一帯で、カラマツやモミの林に、古い教会や別荘が散在するなど、今も20世紀初めの避暑地の面影を色濃く残す。駅前や旧軽井沢ロータリーへ向かう三笠通り沿いで自転車を借りて、ひと巡りするのもよいだろう。
三笠通りを東側に折れて、林のなかの道を進めば、万平ホテルにつきあたる。外国人専用のホテルとして1894年に創業、多くの紳士淑女を迎えてきた、軽井沢を代表するホテルだ。小説や劇作で活躍した三島由紀夫をはじめ、軽井沢に縁の深い作家たちも数多く滞在した。簡素な造りのロビーや食堂だが、歴史の重みを感じさせる。