「さっきバンコクから戻ったばかりで、あさってからはスリランカです。毎日忙しくて、自分の時間なんてありません。休日もほとんどないくらいですからね」
 生き生きと語るシャーンタ・ウィクラマシンハさん(33歳)は、東京都足立区で中古車販売の会社を経営する、若き社長だ。社員は6人、年商は2億円。日本国内で中古車や事故車を買い入れ、修理、板金塗装などを施して、海外に輸出する。主な輸出先は故郷、スリランカだ。ひと月に平均30台ほどを取り扱い、業績は年々、着実に伸びている。
 「日本のビジネスで大切なのは、人間関係です。約束をきちんと守れば、日本人は必ず信頼してくれます。信頼があれば、何度でも取引してもらえる。お得意様を接待したりするのは大変ですが、やりがいがありますよ」
 スリランカの首都、コロンボで生まれたシャーンタさんは、高校を卒業後、旅行会社でガイドの仕事に就いた。その時、知り合いになった日本人旅行者に「遊びにおいで」と誘われ、22歳の時、初めて日本の地を踏んだ。
 「海外旅行をしたのもその時が初めてでしたが、不思議なことに、日本には全く違和感がなかった。昔、来たことがあるような気がしたんです。日本語もどんどん覚えられたし。きっと“縁”があったんですね」
 シャーンタさんは、帰国後すぐに再来日し、日本語学校に入学する。猛勉強の日々を送るが、生活は苦しかった。駅の水飲み場で渇きを癒し、パンだけで空腹をしのいだこともある。
 「私は幼い頃から、自分で会社をもちたかった。日本はやる気さえあれば、夢がかなう国だと思い、必死でがんばりました」
 スリランカの自動車市場は、外国車で占められている。中でも一番人気があるのが日本車だ。品質の良い中古車を、より安くスリランカに送りたい。そう考えたシャーンタさんは、日本の中古車市場をくまなく調べ、同時に腕のいい修理工を探した。努力は実を結び、24歳で今の会社を創業した。
 現在は、1994年に結婚した日本人の奥さん、6歳になる娘と埼玉県で3人暮らし。仕事の合間をぬって、ボランティア活動にも積極的に参加している。最近、その一環として、中古の自転車200台と、救急車4台を日本からスリランカに送った。
 「次の目標は、スリランカで政治家になって、子どもの教育を充実させること。マナーがいい、チームワークや平等の精神を大切にする、といった日本文化のいいところを、ぜひ子どもたちに伝えたいですね。そうすれば、母国はもっと希望がもてる社会に変わると思うんです」
 さらなる夢の実現を目指して、シャーンタさんの多忙な日々は、まだまだ続きそうである。

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