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地下1000mで宇宙の成り立ちを探る
スーパーカミオカンデとカムランド 宇宙に終わりはあるのか?
「ある」と答えるには、陽子に寿命があること、つまり陽子が崩壊することを証明すればよい。そこで東京大学宇宙線研究所が1996年に完成させたのが、「スーパーカミオカンデ」。陽子崩壊で発生すると考えられる放射線を検出する装置だ。
スーパーカミオカンデが設置されたのは、2001年まで亜鉛などを産出していた岐阜県・神岡鉱山の地下1000m。岩盤を直径40m、高さ42mの円柱状にくりぬき、中に超純水を張る。その中に、やはり純水を入れた直径40m弱の円筒形タンクを置く。その内面に、1万個以上の光検出器(光電子増倍管)をびっしりと並べ、水の分子中の陽子が崩壊したときに出る放射線による光(チェレンコフ光)を捉える、という仕掛けだ。建設費は約100億円。地上では、宇宙線とよばれる放射線がノイズになる。地下深いほど、ノイズが少ないのである。
実は、それより前の1987年、その前身でひとまわり小ぶりな検出装置「カミオカンデ」が、偶然、超新星爆発由来のニュートリノという素粒子を観測していた。カミオカンデをさらに進化させたスーパーカミオカンデは、陽子崩壊の観測という目的の他に、いろいろ謎の多かったニュートリノの研究にも使用されることになった。
そして98年、大気中に発生するニュートリノを観測することで、この素粒子に質量があることを証明した。ニュートリノは長らく質量がゼロとされてきており、物理学の歴史を塗り替える大発見だった。この宇宙ニュートリノの検出に大きく貢献した東京大学名誉教授の小柴昌俊さん(76歳)は、2002年10月、ノーベル物理学賞を受賞。スーパーカミオカンデの名も、一躍、世界中に知れ渡った。
一方、98年には、東北大学のニュートリノ科学研究センターが、カミオカンデの跡地に、ニュートリノの検出に的を絞った装置の建設を始めた。「カムランド」である。
カムランドはカミオカンデとほぼ同じ構造だが、ひとまわり小さく、建設費は20億円。また、金属球の中に張ってあるのは油で、その中にさらに別種の油を入れた透明樹脂製の巨大な球が浮かぶ。ニュートリノなどの放射線が来ると、その透明球の中の油が光を発する。この光は、水から発する光よりもかなり明るく、検出器が捉えやすい。そのためニュートリノ検出感度は、スーパーカミオカンデの50〜100倍になるという。
カムランドは、2002年春にデータ収集を開始した。周辺の原子力発電所の原子炉から飛来するニュートリノを観測することにより、精密な質量を算出する。その成果は、ニュートリノ物理学をさらに進化させるものとなるだろう。
スーパーカミオカンデ
カムランド
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