日本の伝統音楽になじみのない人からすれば、和服を着て、三味線や尺八などを演奏していれば、どれも同じに聞こえるかもしれない。しかし、日本の伝統音楽は、実に、50とも80ともいわれる分野に分けられている。
 そのうち、楽器だけが演奏されるものはごくわずかで、ほとんどが歌唱と楽器伴奏からなる。しかも、歌唱はすべて単旋律(独唱あるいは斉唱)で、伴奏楽器が1種類だけというものが大部分を占めている。
 分類は、歌唱の発声法や楽器、そして、それぞれの音色が同じかどうかを基準としている。たとえば、義太夫節、常磐津節、長唄などは、どれも歌唱と三味線の伴奏の組み合わせからなっているが、声と楽器の音色が一方でも異なれば別ジャンルと見なされる。つまり、分野ごとに声と楽器の音色が決まっているのである。
 とはいえ、声にしろ楽器にしろ、音色の差異はたいへん微妙で、専門家でなければ聞き分けられないことも多い。にもかかわらず、日本の伝統音楽では、微妙な差異が重視され、それぞれの混同や融合が起こらないように注意されてきた。このことも分類が細かくなった一因と言えよう。
 日本音楽が微妙な音色の違いを大切にしてきたことは、日本の楽器の形態や演奏にも色濃く反映されている。世界中の楽器と同じように、日本の楽器も「打つ」、「吹く」、「弾く」という三つに大別することができる。
 日本の代表的な「打つ」楽器のひとつに小鼓がある。日本には、2本のバチで皮をたたく太鼓が多いが、小鼓は指で皮を打つ太鼓である。微妙な音色を維持するために、演奏中に音を聞きながら、皮を締めている紐の張り具合を調節したり、皮に息を吹きかけて湿度を保ったりすることが必要とされる。
 「吹く」楽器のひとつに、篠笛がある。歌舞伎で歌の伴奏をする際には、音域によって12本の篠笛を使い分け、地方の祭りでも、2、3本が使い分けられている。このように、日本の伝統音楽では、必要となる音色を出すためにきめ細かな配慮がなされている。

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