女役は女性が演じる
一座の稽古を見て、まず驚かされるのは、座員の中に女性の役者がいることだ。ふつう「歌舞伎」は男性だけで演じられる。だが、女役を女性が演じることは農村歌舞伎ではあたりまえだという。
女性の役者の一人、橘美咲さんが、役者を始めた動機を語ってくれた。
「高校を卒業して村に帰ったとき、村のために何か貢献しようと思ったんです。役者をやってみると、化粧も面白いし、ふだんは着ることのない着物も着られるし、いい経験になってます」
 現在、32人の座員のうち20歳代は7人。近年、座員数は減っているが、若い座員は増えている。また、檜枝岐村は、周囲の村に比べて、都会へ出ても村に帰ってくる若者が多い。その理由は、道路が整備され、村に温泉が涌いたことにある。若者にも観光関係の職場が確保できるようになったのだ。

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