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琉球舞踊「真踊流」家元・真境名佳子さんの孫として生まれた由佳子さん(29歳)は、2000年の誕生日に仕事を辞めた。踊りの修得に専念するためだ。
「ようやく自分の中で、家を継ごうという気持ちが固まりました」
由佳子さんは、小さいときから踊りの稽古場を遊び場として育ち、小学校に上がるとともに厳しい稽古を始めた。周囲からは「後継者に」と期待されたが、反発して、高校を卒業すると東京に出た。しかし、やっぱり琉球舞踊(琉舞)が好きで戻ってきた。
「私、東京で歌舞伎や能を、ずっと見ていたんです。そしたら、琉舞の古典も負けてないな、歌舞伎や能とは違うよさがあるなって思えるようになったんです」
沖縄に戻ってからは、流派の師範のひとりである宮城幸子さんのもとで修業を積んだ。
「私にとって琉舞は、沖縄の古い心に触れられるものなんです。古典を踊っていると、その心が自分にも流れているのを感じます」
そして2001年、沖縄の新聞社が主催した琉舞コンクールで、最高賞に輝いた。いまは、家元のもとで稽古に励んでいる。
「すごく緊張しますよ。お人形さんのように綺麗に踊るのは簡単だけど、自分の気持ちを踊りに映し出せるまでになるのは大変なんですよ。まだまだ私は若くて、それを表現できるほどの人間の深みはないと思っています」
家元の踊りは、「思わず息をするのを忘れる」と言われるほど、見ている人の魂を引き込む力がある。その域にはまだまだ遠いが、琉舞への思いの強さでは負けていない。
「100年かけても、家元を抜いてやろうと思っています」と、彼女は明るく笑った。
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