日本ではここ30年間、花粉アレルギーである「花粉症」の患者が急増している。特にスギの花粉症は日本に特有の症状で、花粉が大量に飛散する毎年2月下旬から5月初旬にかけては、どこに行ってもマスクを着けている人の姿を数多く見かける。まさに「大流行」といっていいほどの蔓延ぶりなのだ。
「スギ花粉症は、今や日本の国民病です」
と言うのは、(財)日本アレルギー協会会長で日本医科大学名誉教授の奥田稔医師。
「1970年代以降、患者は急激に増えて、現在は国民の12〜13%、約1500万人が花粉症だと考えられています」
花粉症になると、鼻や目などに入った花粉がアレルギー反応をひき起こし、かゆみや鼻づまり、鼻水や涙が止まらないといった症状が長時間続く。そのため不眠気味になったり集中力が散漫になったりと、仕事や勉強に大きな支障がでる。
完治は難しいが、専門医の適切な治療を受ければ症状は改善できる。しかし、比較的新しい病気なので治療に熟練した医師は少ないのが現状だ。実際、命に関わる病気ではないし、込みあう病院に行くのを嫌って、効き目の弱い市販薬を飲み、マスクやゴーグルを着けて花粉の侵入を防いでいるだけの人が多いのだ。
そして、この花粉症が何よりもやっかいなのは、突然発症する病気だということである。
「花粉症が増えた原因には、大気汚染、生活習慣や食生活の変化などがあげられますが、今のところはっきりしません。ただひとつ確かなのは、スギ花粉の飛散量に比例して患者も増えたということです」(奥田稔医師)
日本では1949年頃から70年頃まで、盛んにスギの植林が行われた。第2次世界大戦後は戦災で家を失った人が多かったために、またその後は都市化や核家族化が進んだために、新しい住宅がたくさん必要になった。そこで建材として注目されたのが生育の早いスギだったのだ。植林の総面積は国土の12%、4万5000km2以上にもおよぶ。スギは樹齢30〜40年で花粉を飛ばすようになるから、飛散量と花粉症患者が増えた時期はほぼ重なるわけだ。
日本の2月から4月は、入学試験や卒業、就職、企業の決算期といった行事が集中し、日本人が愛する桜の咲く季節である。だが、日本の花粉症患者にとっては、このうえなく憂鬱な時期でもあるのだ。