ところで、俳句をご存じだろうか。わずか17音からなる日本の伝統的な短詩で、近年では英語、フランス語、中国語などでも試みられるようになってきた。もともとは、17世紀後半に松尾芭蕉が完成した詩型だが、それを19世紀末に近代詩として改革・復活させたのが、松山出身の詩人・正岡子規である。
松山市民は彼をたいへん誇りに思って大切にし、博物館を作り、市内の各所に彼の俳句を掲げている(子規の俳句の英訳は、こちらを参照)。
正岡子規の親友のひとりに、日本近代の作家の中で、最も人気のある夏目漱石がいる。1000円札の肖像でも知られる彼は、大学卒業後、松山の中学校に英語教師として赴任し、のちに小説『坊っちゃん』を発表し、その体験を、少し皮肉をこめてユーモラスに描いた。この小説は今でも多くの日本人に読まれているが、ことに松山では、熱血漢の主人公「坊っちゃん」は市民に愛され、菓子から路面電車まで、町中に「坊っちゃん」にちなむものが溢れている。
松山は、遍路と呼ばれる巡礼の道が通っていることでも知られている。1400kmにもおよぶこの道は、四国の東北端から始まって、88の聖なる寺院(札所)をたどりながら島を時計回りに一周する、世界でも類を見ない環状の巡礼路だ。この道は、9世紀の仏教僧・空海によって開かれ、17世紀にはすでに多くの巡礼者を集めた。現在でも日本全国から、年間20万人が車やバスでの巡拝に訪れ、全行程を徒歩でたどる遍路も2000人を超える。
松山市内には七つの札所があり、中でも道後温泉に近い石手寺では、いつでも白衣と笠を身につけ、杖を手にした遍路を見ることができるだろう。
城、温泉、文学そして巡礼。松山は日本人にとって、いつも安らぎを与えてくれる故郷のような町といえよう。