大手繊維メーカーの東洋紡が製造するザイロンは、繊維の常識をはるかに超える世界最強の“スーパー繊維”。PBO(ポリパラフェニレン・ベンズビス・オキサゾール)という加工が難しい分子構造をもつ原料をかき混ぜながら、紡糸機に送り込んで作り出される。なにしろ鉄の約10倍の引っ張り強度をもち、わずか1mmの太さで 450kgもの重さを吊り下げることができる。また、650℃までの高温に耐え、燃えにくい。衝撃に対する強さは鉄やカーボン以上だ。
これらの特徴を生かして、消防服や耐熱服、防弾チョッキといった防護衣料や耐熱工業資材、光ファイバーケーブルなどに使われている。2001年にはアメリカ航空宇宙局(NASA)の宇宙観測用気球の補強材にも採用された。
「原理はアメリカで20年以上も前に発明されていました。しかし製品化することが難しく、日本の繊維製造技術、ファイバーテクノロジーをもって、ようやく実用化を可能にしたのです」(東洋紡・斉藤正和さん)