ふんわりした黄色いオムレツにスプーンを入れると、トマトケチャップで赤く染まった熱いご飯が、ほろほろとくずれ出てくる。そこに卵の上のケチャップをからめて食べる。日本人のだれにも馴染み深い料理、それがオムライスだ。オムレツの中に、ケチャップ味のご飯を入れたこの料理は、西洋料理を日本人好みに工夫した「洋食」。名前は、オムレツの“オム”とご飯の“ライス”を合わせたものだ。
 オムレツやピラフといった西洋料理が日本に入り始めたのは19世紀後半である。その後、本格的な西洋料理のほかに、日本風の洋食が次々と生み出され、庶民の間へ広まっていった。オムライスは、東京・銀座の洋食屋「煉瓦亭」で初めて作られたという説が有力だ。1902年、当時の店主が、日本に昔からあった「茶きんずし」(薄焼き卵ですし飯を包んだもの)をヒントに考案したといわれている。
 オムライスは、洋食屋はもちろん町のレストランや喫茶店などで、今も不動の人気を保っている。また、日本の家庭であれば、たいてい常備している材料で簡単に調理できるため、食卓に上ることも多い。
 今回紹介した「たいめいけん」は、70年の歴史をもつ洋食屋。オムライスは開店当初から作っているが、1985年からは、“正統派”オムライスの他に「たんぽぽオムライス」も加わり、こちらも大好評だ。これは同年公開された、料理がテーマの映画「タンポポ」で「たいめいけん」が撮影協力をしたとき、主人の茂出木雅章さんと映画監督の故・伊丹十三さんが一緒に考案した。ご飯の上に半熟のオムレツをのせ、ナイフで切れ目を入れタンポポの花に見立てるもの。

close