おはぎとは、蒸したもち米を小豆の餡でくるんだ甘い菓子のことで、別名ぼたもちともいう。表面をおおう餡に散らばる小豆の粒を、秋の花である萩に見立てたものが「おはぎ」だ。一方、「ぼたもち」は、春に咲く大輪の牡丹の花に似ていることから名付けられた。大きさは子どもの握り拳ほどで、ぽってりとした楕円形をしている。
もち米と小豆餡の組み合わせが基本だが、大豆を挽いて粉にしたきな粉や黒ごまを、表面にまぶしたものもある。前ページ写真手前の濃い 紫色のものが小豆餡、黄色はきな粉、黒く見えるのはごま。どれも内側には真っ白いもち米が入っている。
「おはぎは昔から庶民のお菓子でした。農家の人々がくず米を美味しく食べるために作ったとも言われています」と教えてくれたのは、東京製菓学校の梶山浩司先生。毎日の農作業に持っていき、間食代わりにほおばったのだそうだ。
それがいつの頃からか、お彼岸のお菓子として食べられるようになった。お彼岸とは、春と秋の春分、秋分の日前後に行われる先祖供養を中心とした行事で、日本独特の習俗だ。この時期は特に先祖を偲んで墓参りをし、おはぎを供えるのが一般的な習わしである。
昔はたいていの家でおはぎを手作りしたが、最近は町の和菓子屋さんで買い求める人が増えた。人気の高いお菓子で、普段でも店頭で見かけるが、お彼岸の時はより多くの人々が買い求める。1年にたった2回のこの時期には、小さなお店でも1日に数千個は売れるそうだ。