今、日本の小学生男子の間で「ベイブレード」という新型のコマが大ブームになっている。日本では玩具が月産100万個を超えれば大ヒットといわれるが、現在、月300万個以上を出荷。それでも供給が追いつかず、玩具専門店やデパートの玩具売り場では軒並み品薄状態が続いている。
「男児向け玩具としては創業以来最大のヒット商品です。2001年末で累計約3000万個以上を生産。正直言って、これほど売れるとは予想していませんでした」と、発売元の玩具メーカー・タカラの鈴木寿伸さん。
発売開始から1年半ほどは月産20〜30万個の普通のヒット商品でしかなかったベイブレードの人気が急上昇したのは、2001年1月から。ベイブレードを題材にしたテレビアニメーションの放映開始がきっかけだった。日本で玩具をヒットさせるには、人気マンガ雑誌での連載、ゲームやアニメとの連携が必要といわれる。それに加え、子どもたちが自分の玩具を自分用に改良できることや、友達と対戦できることなど、ベイブレードは子どもたちが喜ぶ要素を広く満たしているのだ。
「さらには低価格で、親の世代が遊んだ玩具に非常に似ているため、買い与えやすかったのかもしれません」(鈴木さん)
実はこのベイブレード、30代以上の日本人なら誰でも知っている玩具「ベーゴマ」を現代風に製品化したもの。ベーゴマは1940年代後半から60年代前半頃まで日本中の子どもが熱中したコマ遊びで、直径3cmほどの鋳鉄製のコマを紐を使って回し、土俵上で戦わせる。回転が止まったり、外にはじき飛ばされたほうが負けとなる。ベイブレードも遊び方は基本的に同じ。違うのは誰でも勢いよく回せるように発射装置を使うこと、また部品交換によって5つの部品を独自の組み合わせに変えて、自分だけのベイブレードが簡単にできてしまうことぐらいだ。
ちなみにベイブレードの流行は昔ながらのベーゴマにも飛び火した。現在ベーゴマを製造している工場は日本で1カ所だけ。3年前には一時生産を中止するほどだったが、今年に入り月産4〜5万個と大幅に増えているという。
これまで日本ではビー玉やヨーヨーなど、昔の玩具を現代風に製品化したオモチャがヒットしてきた。テレビゲーム全盛の現代でも、昔懐かしい遊びの奥深い魅力は日本の子どもたちの心をつかんで離さないようだ。