「セブン-イレブン」に代表されるコンビニエンス・ストアを、日本人は「コンビニ」と呼ぶ。私が住む東京の住宅街の鉄道駅を中心とした半径500mに限って調べてみたところ、12ものコンビニエンス・ストアがあることがわかった。人口の密集地とはいえ、駅を中心に6〜7本の商店街に100を超える小さな専門小売店があり、大型のスーパーマーケットが3店もあるにもかかわらず、12ものコンビニが成り立っているのは不思議だ。
食品と日用雑貨品を扱う小型の便利な店、コンビニの起源は1927年、アメリカのテキサス州ダラスと言われる。日本でも1969年には最初の店が誕生していたとされるが、1974年にアメリカ型の「セブン-イレブン」が登場して以降、大手スーパーマーケットなどが続々とコンビニ業界に参入。2001年春現在、フランチャイズ・チェーンだけで約3万8000店が営業しており、約6兆7000億円以上の売り上げがある。
日本の人口3400人に1店の割合で分布するコンビニで、日本人は一人当たり年間5万円以上を使っている計算になる。コンビニの隆盛を支えているもののひとつがPOSシステムだ。これは各店のレジスターと本部を結ぶコンピュータ・ネットワークだ。レジには「おじさん」「学生」「おばあさん」などのキーが用意されていて、客の支払い精算の際、店員は商品コード、金額のほかに、性別、顧客の年齢層などの客層キーを押しているのである。このリアルタイムの販売データの蓄積・分析に基づいて、各店に効率的な商品配送をしている。こうして各店には厳選された商品が約3000点並び、また新たな売れる商品が開発されている。これほどコンパクトで効率的なコンビニは、アメリカでも見られない。地域の特性に合わせ徹底して無駄を排除したこの最小公倍数の小売店を中心に、日本人の生活が支えられるようになった感がある。
このコンビニの売り上げの約75%を食品が占め、その半分が、毎日配送される「ファストフード及び惣菜や生菓子などの食品」である。ハンバーガー店などのファストフードは店内で食べることが前提だが、コンビニのファストフードは持ち帰り、自宅や仕事場で食べることを前提としている。その持ち帰り食品の代表がご飯と数種の料理を詰めた「弁当」と呼ぶランチボックスである。拳大にご飯を握り固めた「おにぎり」も人気がある。これは、中心部に魚や肉、漬物などが入っている日本特有の米のサンドイッチで、古くから利用されてきた携帯食が大量生産されるようになったのである。
これらの簡易な昼食や夕食に人気があるのは、調理の手間が不要であること、300円〜500円と安いことなどの理由による。特に独身の都市生活者には欠かせぬものとなっているが、最近では増加している独り暮らしの老人にとっても重要な存在になりつつある。肉や野菜など様々な食材を買い集め料理するより、はるかにコストが低く手間がかからず食事が実現できるからである。
こういうコンビニが繁華街のみならず住宅街でも支持されてきたのは、もともと日本人が自宅に大量の食材を蓄えておくという習慣が乏しかったことと関係しているのではないかと、私は考えている。周囲を海に囲まれている島国日本では、日々新鮮な魚が入手できた。また農村部からは新鮮な野菜なども続々と供給されてきた。そのため、米や調味料など長期保存が可能である食材以外は、毎日、その日の分だけを買うという習慣がある。離島では1日分の朝食の食材を、毎朝買いに行くことがあるし、地方都市では朝市も珍しくない。アメリカ人は大型スーパーで1週間の食材をまとめ買いすることが多いが、日本人はそれを嫌う。コンビニは「我が家の新鮮な食料庫」としての機能を担って拡大してきたのである。コンビニではそのため食材を1日に何度も分けて配送するなど「新鮮さ」を売り物にしているが、運送にかかるエネルギーの浪費は問題である。また、脂肪分が多く栄養のバランスに欠けるコンビニ依存の食生活が、特に若い世代の健康におよぼす悪影響も看過できなくなっている。
一方でコンビニは、旧来の小売店の魅力であり営業力の基礎でもあった地域の顧客との人間的な交流を、いかに築いていくかを問われている。

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