アメリカに初めてコンビニエンス・ストアが現れたのは、70年以上も前のこと。日本では1969年に初めてコンビニが登場した。そして1974年、イトーヨーカ堂がアメリカのサウスランド社と提携して、セブン-イレブン1号店が開店した。以後、続々とコンビニが開店し、その数は、92年には2万店を突破、現在はフランチャイズ・チェーンだけで3万8000店を超えるという。
ただし、コンビニが日本に浸透するには、アメリカから取り入れた経営方法のほかに、さまざまな工夫が必要だった。弁当などの食品を、低温のまま1日に何度も配達する物流体制や、独自の商品である「おにぎり」「おでん」の開発など、きめ細かく対応する販売体制や商品をコンビニは作りあげた。これこそが、日本にコンビニが根付いた大きな要因と思われる。そして82年のセブン-イレブンを皮切りにPOSシステムが導入され、商品の発注や在庫管理、配達に、さらにきめ細かく対応できるようになる。
80年代後半は、各コンビニ・チェーンの出店が最高潮に達し、チェーン間の競争が激しくなった時期だ。多くのコンビニ・チェーンは、出店をひとつの地域に集中する「ドミナント方式」を採用した。店が集中していることから効率的な商品配送ができ、地域住民に親しんでもらえるようになるという出店方式だ。そして90年代に入り、バブル経済が崩壊、日本の景気は後退したが、この間もコンビニは、活発に出店を続け、業界は今も成長している。コンビニは、人びとの便利さを求める声に応えながら、日本人の暮らしをも変えているのだ。
さらに、コンビニ・チェーンの出店は国内にとどまらない。ファミリーマートは台湾へ、セブン-イレブン・ジャパンはハワイへと、80年代末から、日本のコンビニ・チェーンの海外進出が始まった。アメリカで生まれて、日本で育った「コンビニ」の輸出である。ひとつの地域への集中的な出店、きめ細かな物流と在庫管理の構築など、30年間で蓄積されたノウハウは海外でもいかんなく発揮されている。台湾のファミリーマートはすでに1000店を超え、韓国では「おにぎり」が軽食として受け入れられている。2001年8月には、ファミリーマートが3年後から中国への出店を開始することを発表した。