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干した魚の塊が日本料理の味を支える
文●古井麻子 写真●大森裕之 取材協力●秋山商店
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あたたかな湯気をあげる味噌汁の快い香りや、煮物を口に含んだ時に広がる、こくのあるうまみに、幸せな気分を感じる日本人は多い。こうした日本料理に特有の香りや、うまみのもととなっているのが鰹節である。
鰹節とは鰹という魚の身を乾燥させたもの。見た目はまるで石か木片のようだが、日本料理には欠かせない食材だ。味噌汁や煮物のほか、天ぷらやそばのつゆなど、多くの料理に鰹節で取っただしが使われている。
材料となる鰹は、春から秋にかけて日本近海を北上する回遊魚だ。日本では初夏を告げる魚として親しまれている。この鰹を丸ごと煮て割き、骨と皮を取り除いた後に、その身を何度も燻し、日干しにすることを繰り返す。すると、半年ほどで写真のようなカチカチになった鰹節ができあがる。ちなみに表面を覆っている茶色い粉はカビで、このカビが鰹節を発酵させるのだ。
料理の時は、カビを洗い落としてから専用のカンナで削って使う。20〜30年前まではどこの家にも削り器があって、食事の支度のときに、子どもたちが鰹節を削ったものだ。しかし、最近ではあらかじめ機械で削った「削り節」を使うのが一般的。削った鰹節はだしにすると、うまみ成分が出て、日本料理に独特の風味となる。この風味を再現した粉末や液体調味料も普及し、若い世代には、本物の鰹節を見たことがない人も多い。
それでもなお、多くの日本人は鰹節の味や香りにこだわる。「鰹節は日本料理のもと。私たちの店でも修業時代はまず鰹節の扱いから学びます」と言うのは、日本料理店「青柳」の料理長、近石和彦さん。鰹節がなくては日本料理は始まらない。今日も日本各地の食卓を鰹節が支えている。
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(1)堅い鰹節はそのままでは食べられない。まず汚れを取り、カンナのついた鰹節削り器で削る
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(2)削られた鰹節は「削り節」と呼ばれ、だしを取ったり、料理にかけたりして使う
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(3)削り節を湯に放ち、布でこしてだしを取る。火加減や削り節を引き上げるタイミングが肝心で、料理人が最も神経を使う場面だ。
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(4)なれた手つきでだしを取る近石和彦さん
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