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当世ニッポンはやりもの事情 - 全国の日本人を熱狂させる100円ショップ
文●松岡 敏 写真●山田 三蔵
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一般的に100円ショップはワンフロアの店がほとんど。しかし、3月末に開店した写真の「ダイソーギガ船橋店」は、地上6階、地下1階、売り場面積約5600m2いう超巨大店だ
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ここ数年、日本の小売業界では“価格破壊”が起こっている。長引く経済不況の影響で、多くの商品が、定価の2割引や3割引はおろか、「定価」という言葉が意味をなさないほど値崩れを起こしている。そんな中、店内の全商品を100円均一で売る100円ショップが、連日、主婦や若者といった多くの客で賑わい、大きな話題を集めている。
ブームの火付け役は、100円ショップの最大手、大創産業(以下ダイソー)。「ザ・100円SHOPダイソー」を全国で2000店舗以上も展開している。1995年、233億円だった同社の売上高は、2000年には2000億円に急増し、わずか6年で8.5倍以上も伸びた。現在も、毎月の新規出店数が平均40店という勢いで、売上高の伸び率、新規に出店する速さでは、日本一だといわれる。もはやダイソーは“100円ショップの代名詞”になった感さえある。
そもそも、すべての商品を100円均一で売る商法は、30年近く前からあった。それがここにきて人気が出た理由として、100円という低価格にもかかわらず商品の質がきわめて高い、という点があげられる。
例えば、日本の飲食店でコーヒーを注文すると、安いもので180円程度である。それを180円以下の値段で販売するには、原価70円程度のものを使って利益を出すというのが従来の常識であった。
しかしダイソーは、「100円以上の価値があるものを100円で売る」ことを考えた。そして仕入れ単価と仕入れの数の関係を逆手にとった戦略に決めた。つまり1000個の発注では仕入れ単価が1000円以上かかる商品を、数十万個も大量に仕入れれば、単価は大幅に下がる。この仕組みから、仕入れ単価が100円以下になるまで仕入れの数を増やせば、本来500円や1000円で売るべきものを、たったの100円で販売できるという論理だ。
以後、この手法は小売業界全体に広がり、その結果、商品全体の質が向上することにつながった。
一方、商品の高品質に加えて、品 えの豊富さも人気の理由の一つである。店の規模にもよるが、取り扱い品目は数万項目に達し、ほとんどの生活雑貨が うのはもちろん、民芸品や辞書、CDといったものまで販売している。さらにハサミだけで数十種類、文書ファイルは数百種類、化粧品は1000種類以上……と、同じ品目でも目移りしてしまうほどに種類が多い。しかも毎月多くの新商品が投入され、消費者を飽きさせない。
「100円ショップは、値段以上に価値のある商品とそれを選ぶ楽しさ、快適さを売る主婦のレジャーランド。飽きられたら、おしまいなんですよ」
と、ダイソーの矢野博丈社長は説明する。
ダイソーの成功に刺激を受け、大手スーパーマーケットが「88円均一ショップ」の展開を始めるなど、全国的な100円ショップブームは当分終わりそうにない。
また日本国内だけでなく、タイをはじめとするアジアの国々でも、低価格が売り物のワンプライスショップが次々に開店し、人気を呼んでいるという。
近い将来、日本発の“価格破壊商法”が、世界を席巻する日が来るかもしれない。
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店内にある商品は、どれもお得な気分にさせられるから不思議だ。(1)用途に応じて使い分けられるプラスチックのかご (2)化粧品 (3)左から土鍋、徳利と猪口、升 (4)台所用品 (5)ガラス製の食器
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