人間そっくりの表情
![ジェミノイドF(左)とそのモデルになった女性](images/005.jpg)
ジェミノイドF(左)とそのモデルになった女性 © 共同通信
高度な機能を持った人間型ロボットが活躍する未来社会では、会った人が、気持ち悪がったり、驚いたりしないよう、ロボットにも人間らしい自然な表情や動きの機能が必要です。
大阪大学の石黒浩教授が開発した「ジェミノイドF」は、人間らしい表情や仕草を研究するために作られたロボットです。20代の女性をモデルに、レーザー光線とコンピューターで全身を立体的に計測し、顔は石膏でていねいに型どりして作られました。
歩いたり、腕を自分で動かしたりすることはできませんが、操作する人の顔の動きをカメラで読み取り、再現してみせます。皮膚は柔らかいシリコンでできており、笑顔や照れた表情、困った顔など、まるで感情があるようです。胸や肩は、呼吸しているように動くところも、本物の人間みたいです。
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より人間らしく見せる研究として、ジェミノイドFが登場する演劇も上演されています。ジェミノイドFが、まるで感情を持った女優のように会話したり、詩を朗読して見せた舞台は人気が高く、フランスやタイなど海外でも反響を呼びました。
歯科医の練習用ロボット
![人間そっくりのロボットを相手にすることで、学生は本番さながらの緊張感で練習に取り組める](images/008.jpg)
人間そっくりのロボットを相手にすることで、学生は本番さながらの緊張感で練習に取り組める
人間そっくりに反応するロボットは、医療の分野でも役立っています。日本歯科大学とロボットメーカーが共同開発した「シムロイド」は、できるだけ患者さんが痛さや苦しさを感じず、安心して虫歯を直せるように、治療法を練習するためのロボットです。
シムロイドは、「大きく口を開けてください」「もう少し右を向いてください」などと声をかけると、その通りに動きますが、聞こえやすい声ではっきりとお願いしないと動いてくれません。時間が経つと、人間の患者さんのように、あごが疲れて口の開け方が小さくなったり、首を動かしたりもします。
![シムロイドをつかった治療の練習。歯を削りすぎると、左手を挙げて痛みを訴えたり、「痛いです」と言ったりする](images/009.jpg)
シムロイド®をつかった治療の練習。歯を削りすぎると、左手を挙げて痛みを訴えたり、「痛いです」と言ったりする
歯科医を目指す学生たちは、このロボットを使った練習を繰り返すことで、できるだけ短い時間で正確に治療する方法や、患者さんに安心してもらえる話し方と態度を学ぶことができるのです。
これらのロボットは、まだまだ完全ではありません。これからも続けられる技術者たちの研究の成果が積み重なり、いつの日か人間とロボットが共に生きる社会が実現するかもしれません。
(2013年10月更新)