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ハイテクジャパン

いつでも、どこでも、ごちそうが食べたい:
フリーズドライ


パート2

宇宙の寿司パーティー

 フリーズドライは、空気がほとんどない中だと、水が沸騰(ふっとう)する温度がマイナス20度Cからマイナス30度Cになるという現象を利用して、物質の中の氷を直接、気体にして水分を抜き取ってしまう技術です。食品をフリーズドライにすると、重さが4分の1ぐらいになる上、形や色、栄養の成分をそのままに、冷蔵庫で冷やさなくても長持ちするようになります。


フリーズドライの仕組み (1)作ったばかりの料理の中には、たくさんの水分がある(2)マイナス30度Cで料理を凍らせると、水分が氷になる(3)真空にした中で料理を温めて乾かすと、氷が水にならずに直接水蒸気になって抜けていく

フリーズドライの仕組み (1)作ったばかりの料理の中には、たくさんの水分がある(2)マイナス30度Cで料理を凍らせると、水分が氷になる(3)真空にした中で料理を温めて乾かすと、氷が水にならずに直接水蒸気になって抜けていく



冷たい風にさらして乾燥させる昔ながらの「凍り豆腐」作り(大崎市提供)

冷たい風にさらして乾燥させる昔ながらの「凍り豆腐」作り(大崎市提供)

 ヨーロッパで開発された技術は20世紀に入って世界中に広まりましたが、日本では約800年前に、大豆から作った伝統食品の「豆腐(とうふ)」を、家の外で凍らせて、乾かす「凍り豆腐」の技法が、フリーズドライに似た技術として考え出され、現代に伝わっています。


 フリーズドライ食品が、日本で本格的に作られるようになったのは、1971年にお湯をそそいで3分待つとできあがるインスタントのカップラーメンが作られたことがきっかけです。めんは乾燥方法が違いますが、エビや肉、玉子などの具材作りにはフリーズドライが使われました。この世界初のカップラーメンが食べられた数は、約40年の間に世界80カ国・地域で約317億食にものぼります。2005年には、スペースシャトルに搭載された世界初の宇宙食ラーメンにも、フリーズドライの具材が使われました。


世界各国で食べられている日本初のカップラーメン 世界各国で食べられている日本初のカップラーメン ©日清食品ホールディングス 宇宙でラーメンを食べる野口聡一宇宙飛行士(JAXA/NASA提供) 宇宙でラーメンを食べる野口聡一宇宙飛行士(JAXA/NASA提供)

 宇宙と言えば、2010年4月に、地上から400?離れた国際宇宙ステーション(ISS)で、日本食の寿司を食べるパーティーが開かれたことを知っていますか? 日本人宇宙飛行士が宇宙で握った寿司用の生の魚は、南極観測隊員が食べたものと同じフリーズドライ食品でした。荷物を宇宙ロケットに積んで打ち上げるのには、1?当たり数百万円もかかるといいますから、軽くて長持ちする上に、おいしいフリーズドライの日本食は、各国の宇宙開発関係者の間でも大きな期待を集めています。



津波被害の資料を復元

 フリーズドライ技術が活躍しているのは、食品作りの現場だけではありません。医薬品開発など生命科学の分野でも使われていますが、遺跡から発掘された考古学資料を保存するのにも役立っています。


 日本の遺跡では、細長い木の板に墨(すみ)で文字を書いた「木簡(もっかん)」が数多く発見されます。木簡は、土の中や水中で水を吸って膨(ふく)らんでいる場合も多く、ふつうに温めると縮んでしまいます。そこで、もとの形にするために使われるのがフリーズドライの技術です。


津波で水浸しになった文化財などの復元作業。学術用としては世界最大のフリーズドライ装置を使って取り組まれている(独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所提供)

津波で水浸しになった文化財などの復元作業。学術用としては世界最大のフリーズドライ装置を使って取り組まれている(独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所提供)

 そして、このフリーズドライ技術は、2011年3月に起きた東日本大震災で起きた大きな津波で水浸しになった資料の復元にも応用されています。海水につかってしまった文化財や重要書類は放っておけば、いつかはカビが生えてぼろぼろになってしまいます。フリーズドライなら、冷凍することでカビの発生を防ぐこともできるし、紙を破ることもなく一度にたくさんの書類を乾かすことだってできるのです。


 日本のフリーズドライ技術は、いろいろな場面で私たちの生活を支えています。


(2013年2月更新)