波や風の抵抗を抑える
![空気の泡で摩擦を減らして航行するモジュール運搬船「ヤマト」](images/004.jpg)
空気の泡で摩擦を減らして航行するモジュール運搬船「ヤマト」 ©日之出郵船株式会社
![三菱空気潤滑システム「MALS」船底を覆って流れる気泡の様子(イメージ)](images/005.jpg)
三菱空気潤滑システム「MALS」船底を覆って流れる気泡の様子(イメージ)
©三菱重工業株式会社
波、風の抵抗を抑えるのもエコシップの特長です。ユニークなのが、船首部の船底から船底に沿って送風機で空気の泡を発生させ、船と海水の摩擦を減らして推進力を手助けするシステムでしょう。泡の効果は理論上分かっていましたが、このシステムを実現したのは日本が初めてです。重量物や大型の積み荷を輸送するモジュール運搬船「ヤマト(YAMATO)」など2010年以来3隻が就航していて、CO2を約6%削減できることを証明しています。泡を出しながら走る船なんて変わっていますね。
![旭洋造船が建造した風圧の抵抗を軽減する省エネ型自動車運搬船「シティ・オブ・セント・ピーターズバーグ」](images/006.jpg)
旭洋造船が建造した風圧の抵抗を軽減する省エネ型自動車運搬船「シティ・オブ・セント・ピーターズバーグ」
また、2010年12月に就航した自動車運搬船「シティ・オブ・セント・ピーターズバーグ(City of St.Petersburg)」は、船首が半球形の船です。この船は、日本の自動車会社が北大西洋で航行させるもので、半球型の船首だと風の抵抗をこれまでより最大50%削減し、CO2排出量を年間約2500トン減らすことができます。
![空気抵抗の少ない船体デザインと太陽光パネルが特徴的な次世代の自動車専用船「ISHIN-?」の航行イメージ](images/007.jpg)
空気抵抗の少ない船体デザインと太陽光パネルが特徴的な次世代の自動車専用船「ISHIN-?」の航行イメージ ©株式会社商船三井
船首が半球状の船に太陽光パネルを載せ、風の抵抗を抑えながら太陽光エネルギーも利用、さらに効率的な船を造る計画もあります。
これ以外にも、最近は船体の塗装方法も考えられています。自然界からヒントを得て、水中を素早く泳ぐサメの肌や、水をはじくハスの葉っぱなどと同じような表面が、ナノテクノロジーの活用で開発されています。さらに、船体を軽くするため、アルミなどの合金や、航空機に使われている炭素繊維を使う方法も考えられています。
夢のエコシップも
日本では、2030年をめどに太陽光や風力を利用する「スーパーエコシップ」の建造が計画されています。全長352?の船体に太陽光パネルを張り付けるほか、8本の大きな帆を立てて風も推進力にします。その姿はまるで、海を走るミツバチのようです。
![近未来のコンテナ船「NYKスーパーエコシップ2030」](images/008.jpg)
近未来のコンテナ船「NYKスーパーエコシップ2030」 ©日本郵船株式会社
自然エネルギーのほか、主な推進力としてはLNGを利用した燃料電池が想定されています。電池はコンテナと同じ大きさで16本使い、カセットのように取り外しができるので、港に着いたら電池を交換します。
2030年時点ではLNGも使うので、重油のディーゼルエンジンで動く現在の船と比べ、CO2の排出削減率は69%ですが、最終的には排出ガスをゼロにするゼロ・エミッションを目標にしています。
船舶が出すCO2は年間10・5億トンといわれ、世界のCO2総排出量の3・3%を占めています。これはドイツ1カ国分を上回る量です。さらに、新興国の経済発展で、国際海運の総排出量は2050年までに現在の2・5倍に増えるとの試算もあります。エコシップに対する日本の挑戦は、地球環境を守る上で大いに期待されています。
(2012年11月更新)