あかつきは5つの“眼”で金星を観察

あかつきに搭載された5台のカメラ。上から高感度カメラ、中間赤外線カメラ、紫外線カメラ、地表面を撮影する近赤外線カメラ、大気を撮影する近赤外線カメラ。(C)JAXA


宇宙ヨット「イカロス」。帆(ほ)の部分は円形の本体(直径1.6m、高さ0.8m)にしまわれています。宇宙空間に放たれるとくるくると回転し、その勢いで帆が開き、帆の一辺は14mにもなります。(C)JAXA
「あかつき」の優れた性能のひとつが“眼”です。5台ものカメラを備えている探査機は世界で初めてです。2台の近赤外線(きんせきがいせん)カメラが厚い雲を通して、金星の地面や大気を観察し、1台の中間赤外線(ちゅうかんせきがいせん)カメラは雲の上からもれてくる赤外線をとらえます。そのほかにも、雲の微妙(びみょう)なコントラストを見分ける紫外線(しがいせん)カメラや雷(かみなり)を観測する高感度カメラを使って、「金星のどこで何が起こっているのか」を立体的に把握(はあく)します。
また、あかつきの軌道(きどう)は楕円形(だえんけい)になるよう特別にデザインされています。金星から8000kmと最もはなれたときは金星全体を広く観察し、300kmと最も近づいたときは雲の様子をクローズアップで観察します。30時間をかけて1周しながら、2時間に1回撮影(さつえい)し、地球に映像を送ります。
あかつきの成果には世界中の研究者が注目しています。たとえば、金星で雷が発生しているかどうかは20年以上議論されていますが、あかつきの映像がその議論に終止符(しゅうしふ)を打つでしょう。金星の気候メカニズムの解明はもちろん、金星を研究することで、温暖化が進んだ地球の姿を予測できるようになるのです。
「あかつき」といっしょに、世界初の宇宙ヨット「イカロス」も宇宙に旅立ちました。「イカロス」は風の代わりに太陽光の力を受けて前へ進みます。金星の周囲を回りながら、半年かけて性能を実験します。
(2010年7月更新)