日本のプロサッカーリーグ「Jリーグ」の試合(©J.LEAGUE)
スポーツの分野で、いろいろな最新技術が使われています。人工知能AIを使って作戦を考える参考にしたり、選手の動きが速すぎて、スローモーションにしても分からなかったような動作が分かるようになったりしています。こうした技術は、選手個人やチームの技術向上に役立つだけでなく、人間の目では判断できない難しい技を公平に採点するためにも利用できます。今、企業や大学、競技団体が協力して、日々技術開発に取り組んでいます。
サッカーの試合をAIで予測
新しい事業や技術に挑戦している日本のある企業は、世界で初めて、AIを使ってサッカーの試合がどのように進むのかを予測する技術を開発しました。これまでに行われたサッカーの試合の中で、チームやそれぞれの選手がどういう動きをしていたかなど、あらゆるデータを入力して予想を行います。この会社は、この技術を使って、日本のプロサッカーリーグである「Jリーグ」の実際の試合の再現や予測を行っています。
パソコンやスマートフォンの画面上にサッカー場が表示され、選手の姿が敵味方で色分けされた丸い記号で表されます。それぞれの選手は動き続け、選手の間をボールが行ったり来たりする様子が分かります。選手の名前や顔の向きも表示されるため、ボールを持った選手がどこにパスを出そうとしているのか、またパスを欲しい選手がどのように動くのかが、実際に試合を見ているよりもよく分かります。この技術を利用すれば、サッカーファンは選手の気持ちが分かり、今まで以上に試合を楽しむことができます。
AIによるサッカーの試合の分析映像「WARP」(提供:Sports AI)
体操競技の判定に利用
体操の技は日々、進歩しています。高速でのひねりや回転は、テレビ映像を見ただけでは区別がつきません。それは会場の審判も同じです。半ひねりを加えたとか、体のねじれの角度が正確かなど、瞬間的には判断できません。録画でも区別がつかないことがあります。そうした中、日本の有名な電気製品メーカーは、レーザーと呼ばれる特別な光を使った技術(3Dレーザーセンサー)を応用し、体の動きを分析して数字に置き換え、データ化するシステムの開発に取り組んでいます。
選手の体のいろいろな場所にデータを発する特別な器具を付け、どういう動きをしているかを解析する作業はこれまでも行われてきました。しかし、試合中に選手に器具を付けることはできません。そこでこの会社は、演技を行っている選手に対し、1秒間に数百万の場所にレーザー光を当てる技術を開発しました。レーザー光の数が多ければ多いほど、立体的で正確な選手の動きが分かります。レーザー光を当てて得られたデータを即座にコンピューターグラフィック(CG)で再現し、試合の時に審判の判断と合せて判定材料とすることで、採点がより正確になります。この技術は、ほぼ完成し、現在、実際に試合で使えるか検証作業が進められています。この会社は、2020年の東京オリンピックでの実用化を目指しています。
2020年東京オリンピックでも活躍が期待される体操の白井健三選手(Getty)
富士通が開発した3Dレーザーセンサー技術の仕組み
ラグビーW杯に向け、加速
別の日本の大手家電メーカーは日本の有名私立大学と共同で、ラグビーのプレーを自動分析するAIを開発しました。ラグビーはスクラムやモール、ラックといった選手が集まった状態でボールを取り合ったり、フェイントなど相手を混乱させたりするプレーが多くあります。そのため、ボールの位置が映像では分かりづらく、データ入力に時間がかかり、素早い分析が難しいとされてきました。そこで、AIを使って、ラグビーにおける過去の動きのパターンと実際の試合での動きを照らし合わせて、プレーの種類を判断することで、データの入力時間が大幅に短縮できるようになりました。監督やコーチは試合中にプレーを分析したり、次の作戦を考えたりできます。
日本で2019年にラグビーのワールドカップが開催されるので、日本代表チームへの導入を目指しています。
今後もスポーツを盛り上げ、サポートしていくために様々な技術が続々と生まれていくことでしょう。
ラグビーのニュージーランド代表と対戦する日本代表選手(Getty)
ラグビー解析デモ画面(提供:東芝デジタルソリューションズ)