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ハイテクジャパン

世界最大級の光学望遠鏡を支える驚きのテクノロジー


ハワイ・マウナケア山の山頂近くにあるすばる望遠鏡。©NAOJ

ハワイ・マウナケア山の山頂近くにあるすばる望遠鏡。©NAOJ

 ハワイにある、マウナケア山の山頂付近には、10基もの巨大望遠鏡が並んでいます。世界でも有数の天体観測にふさわしい場所であり、アメリカをはじめとする世界各国の研究機関が望遠鏡を設置しているのです。その中の一基が、日本の国立天文台が設置した「すばる望遠鏡」です。

 このすばる望遠鏡は直径8.2mという世界最大級の主鏡を持っており、正確に観測できるように多くの先端技術が使われています。空気のゆらぎを抑える最新鋭(さいしんえい)のドーム、独自に備えられた観測装置を4つの焦点に自動的に切りかえるシステムなどがありますが、なかでもおどろかされるのが、主鏡をロボットの手が支える"能動光学(のうどうこうがく)"と呼ばれている技術です。

ほんのわずかの歪みも許されない巨大な鏡

 すばる望遠鏡の最大の武器は、直径8.2mの大きな主鏡です。鏡を大きくすることで、宇宙から届く弱い光でも見ることができるのです。しかもすばる望遠鏡で使われている鏡は、多くの鏡を貼り合わせるのではなく、たった1枚の鏡でできています。

 しかし、大きな鏡にも欠点があります。それは重さです。少しでも軽くするために主鏡を20cmの厚さまで薄くしていますが、これは22.8 トンの主鏡の重さを支えるためのギリギリの厚さであり、放っておくと鏡そのものの重さでゆがんでしまいます。そのため、望遠鏡を見たい方角に傾けるとその歪みは大きくなり、最悪の場合、主鏡が割れてしまうでしょう。そうでなくても、わずかでも歪みがあれば、遠くの星がきちんと見えなくなります。鏡そのものの滑らかさは0.012 ミクロンの精度ですから、ほんのわずかな歪みでも、許されないのです。

261本のロボットの手が、裏側から鏡を支えている
鏡を裏側から支えている261本のロボットの手。©NAOJ

鏡を裏側から支えている261本のロボットの手。©NAOJ

ロボットの手はそれぞれ別々に動いて、鏡を最適な形に調整しています。©NAOJ

ロボットの手はそれぞれ別々に動いて、鏡を最適な形に調整しています。©NAOJ

 すばる望遠鏡で採用されているのが「能動光学」という技術です。大きな主鏡を261本ものロボットの手(アクチュエーター)で裏側から支えています。このロボットの手はコンピュータ制御されていて、主鏡の傾きに応じて動き、歪みを直しています。

 すばる望遠鏡のすごさは、この主鏡を支えるロボットの手の数が他の望遠鏡に比べて多いことと、その制御技術、そして精度を高めるために主鏡の裏に直接ロボットの手をとりつけたことにあります。261本のロボットの手がそれぞれ最適な動きをして主鏡の精度を高めていきます。その緻密(ちみつ)な制御こそ、すばる望遠鏡を世界トップクラスの望遠鏡にしているのです。

他にもある、すばる望遠鏡の最先端技術
555トンもあるすばる望遠鏡本体はリニアモーターで動かしています。©NAOJ

555トンもあるすばる望遠鏡本体はリニアモーターで動かしています。©NAOJ

空気の乱れを一番小さくする形が採用されたドーム。 ©NAOJ

空気の乱れを一番小さくする形が採用されたドーム。 ©NAOJ

 すばる望遠鏡には他にもすごい技術が使われています。たとえば、望遠鏡の土台です。望遠鏡本体は、合わせて555トンもありますが、この望遠鏡を支え、狙ったところに向けるための土台はなんと油の上に乗っているのです。摩擦を徹底的に押さえた油の上で、リニアモーターで動かせるようになっています。

 望遠鏡をおさめるドームも、外の空気の乱れに影響されない構造を考えて、水流試験を繰り返し、最終的に現在の煙突のような形になりました。また、標高4,000mを超えるマウナケア山の山頂で大きな観測装置を取りかえることは危険がともなうため、すばる望遠鏡では自動で交換できる装置を採用しています。

 このようにすばる望遠鏡では、正確に観測するためにたくさんの最先端技術が使われているのです。

すばる望遠鏡で撮影した、地球から2600光年も離れたところにあるバラ星雲。 ©NAOJ

すばる望遠鏡で撮影した、地球から2600光年も離れたところにあるバラ星雲。 ©NAOJ