千人規模の観客を迎えて開催されるサイエンスショー(画像提供:米村でんじろうサイエンスプロダクション)
日本には、「百聞は一見に如かず」(100回聞くことは1回見ることに及ばない)ということわざがあります。百回、話を聞くよりも、実物を一回見たほうがいい、そのほうがずっとよく分かるという意味です。
学校で勉強する理科も、授業で先生の話を聞くだけでなく、実際に実験してみたりしたほうが理解しやすく、興味も湧きます。
テレビなどで科学の実験をすることで有名な米村でんじろう先生が、科学の楽しさ伝えるために大きな会場でサイエンスショーを始めたのは1990年代のことで、いまも全国の会場で人気を呼んでいます。
そこで考案された実験のいくつかは、全国の科学館(自然科学についての展示を行う施設)などで行われているサイエンスショーにも受け継がれています。そこでは、ステージが観客のすぐそばにあり、目の前で実験が行われます。
また、実験を通して科学を勉強する「サイエンス教室」「実験教室」といった学習塾も増えており、科学の実験に対する関心は高まりを見せています。
気流の回転運動からドーナツ状の煙をつくる空気砲の実験(画像提供:米村でんじろうサイエンスプロダクション)
液体窒素を気化させてロケットのような噴射を再現する実験(画像提供:米村でんじろうサイエンスプロダクション)
空気の重さを体感するための巨大な風船を使った実験(画像提供:米村でんじろうサイエンスプロダクション)
目の前で実験して参加者を楽しませてくれる科学館のサイエンスショー
科学館などで行われるサイエンスショーでは、ステージ上の実演者が、会場に集まった子どもたちひとりひとりに語りかけるように、科学への理解を深めてくれる楽しい実験をつぎつぎと披露します。
科学館などのサイエンスショーでは、常に観客の目の前で実験が行われる(画像提供:東芝未来科学館)
たとえば、静電気の実験では、ステージに呼んだ観客に静電気が発生しているボールに触れてもらって髪の毛を逆立たせたり、ビニール製のひもを細かく裂いたものをふわふわと空中に浮かせたり……。このような実験や体験を通して、静電気の+と-が、磁石のS極とN極同様に、同じものは反発し、違うものはくっつこうとする性質を持つことが分かります。
静電高圧発生装置という特殊な装置を使って静電気を空中に放電し、稲妻を発生させる実験では、暗くした会場に稲妻が一瞬だけ光ります。
静電気で髪の毛を逆立てる実験(画像提供:東芝未来科学館)
ビニール製のひもが静電気でふわふわと浮かぶ(東芝未来科学館)
静電高圧発生装置で稲妻を発生させる実験(東芝未来科学館)
自分の手で実験して科学を体感するサイエンス教室・実験教室
サイエンスショーよりもっと身近に、自分自身の手で実験できるのがが、「サイエンス教室」です。「実験教室」と呼ばれることもあり、サイエンスショーや学校の授業よりもずっと多くの実験を体験することができます。
教室によって内容は異なりますが、顕微鏡で水中の微生物を観察したり、試験管を振って化学の実験したり、鉄芯の周りに電線を巻いて電磁石を作ったり……といった様々な実験が行なわれます。
試験管やフラスコなどの実験器具を使い、自分の手で触れて、自分の目で直接見て、ときにはにおいを嗅ぐことができ、単に話を聞たりビデオを見たりするのとはまったく違う臨場感で、科学を「体感」できるのです。
ガラスの棒を溶かしていトンボ玉(装飾などに使うガラスの玉)をつくる実験(画像提供:サイエンス倶楽部)
デンプンのりを唾液で糖に変えて消化器の謎をさぐります(画像提供:サイエンス倶楽部)
食塩水に金属板を入れただけの電池で電気が発生し、音楽が流れます(画像提供:サイエンス倶楽部)
科学のおもしろさを教え興味をひろげてくれる
科学は、これまで幾度もの実験をくり返し、仮説を検証することでここまで発展してきました。
サイエンスショーやサイエンス教室、実験教室を通して実験のおもしろさを知った子どもたちが、きっとこれからの科学を支えていってくれることでしょう。