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流行通信

世界で最も短い詩 俳句


パート2

自然観察の力育てる

 俳句は、日常の生活の中でも作れますが、日本では、大人も子供も、俳句を作るため山林や海岸、公園などを歩く「吟行(ぎんこう)」に出掛けます。吟行をする中で、普段の生活では見過ごしてしまっている虫や鳥を発見したり、落ち葉など季節の変化に気付いた時に生まれた言葉が、俳句となるのです。


目隠しをして自然を感じ、俳句を作れるか挑戦してみる子どもたち(東京・新宿御苑で) 目隠しをして自然を感じ、俳句を作れるか挑戦してみる子どもたち(東京・新宿御苑で) 5-7-5の音の数を指折り数えながら俳句を作る少年と祖母(東京・新宿御苑で) 5-7-5の音の数を指折り数えながら俳句を作る少年と祖母(東京・新宿御苑で)

短冊に自分で作った俳句を書きとめる女の子(東京・新宿御苑で)

短冊に自分で作った俳句を書きとめる女の子(東京・新宿御苑で)

 今年の夏、東京都内の公園で、親子で吟行をするグループを見かけました。子どもたちは、じっくりと自然観察をするだけでなく、目隠(めかく)しをして木に触(さわ)ってみたり、芝生をごろごろと転がったりして、感じたことを俳句にしていました。こうした体験を通じて物事を考える習慣を身につけることは、俳句などの文学を理解する力を育てるだけでなく、自然科学を研究する才能を磨(みが)くのにも役立つとも言われています。



句会を開いて、優れた作品を選ぶのも俳句の楽しみ

句会を開いて、優れた作品を選ぶのも俳句の楽しみ © 埼玉県北本市立西中学校

 良い句が作れたなら、俳句作りのグループで集まって「句会(くかい)」を開きます。句会では、作品に名前を書かず、誰が書いた作品なのか分からない中で、優れた句を選び、鑑賞します。乱暴な言葉遣いの男の子がロマンチックな詩を読んでいるのに驚いたり、勉強やスポーツでは目立たないクラスメートの作品が最優秀作品に選ばれたりするのも、句会の面白いところです。


国境を越え、世界に

 言いたいことを瞬間的に短い文章にまとめる訓練にもなることから、俳句作りを学校で教える国や地域も増えています。17音や季語のルールは気にせず、自分の国の言葉で作った3行の詩を発表できる場として「世界こどもハイクコンテスト」が1990年から2年に1度、開かれています。


世界こどもハイクコンテスト(2011~12年 オーストラリア大会)の大賞作品

世界こどもハイクコンテスト
(2011~12年 オーストラリア大会)の大賞作品

Christmas
Santa surfs
On the wave

クリスマス
サンタサーフィン
波の上

© 日航財団


 15歳までなら、誰でも応募できるこのコンテストには、子どもたちが自由に作った3行の短い詩と絵画が一つの作品として出品されます。2011年には、25カ国・地域から約12、000人の作品が集まりました。日常の一コマを素直に読んだ句と色鮮やかな絵画からは、それぞれの国や地域の子どもたちの楽しい生活ぶりがいきいきと伝わってきます。


世界こどもハイクコンテスト(2009~10年 ロシア大会)の大賞作品

世界こどもハイクコンテスト
(2009~10年 ロシア大会)の大賞作品

The school is like mother
Loves and teaches everyone
I run to her with joy

学校はお母さんみたい
みんなを愛して教えてくれる
うれしくて駆けていく

(「日航財団編「地球歳時記Vol.11がっこうのうた」ブロンズ新社発行」から)



 俳句は、20世紀初めにフランスで紹介されて以来、欧米諸国だけでなくアジア、アフリカなど世界中に広まりました。俳句を作る人の数は、日本国内で800万~1000万人、日本以外では約50カ国・地域で200万人いると言われています。


世界こどもハイクコンテスト(2011~12年 モロッコ大会)の大賞作品

世界こどもハイクコンテスト
(2011~12年 モロッコ大会)の大賞作品

Forest festival
Trees dancing also
Playing with wind

森のお祭り
踊りながら木は
風と遊んでいるよ

© 日航財団


 日本で生まれた「俳句」は、言葉の壁を越え、世界共通の文学として親しまれています。


「世界こどもハイクコンテスト」シンガポール大会の表彰式

「世界こどもハイクコンテスト」シンガポール大会の表彰式 © 日航財団

(2012年12月更新)