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流行通信

ピアノの森


表紙写真

(© 一色まこと/講談社)

 ほとんど人の訪れることもない森の中に、ぽつんと置き去りにされたグランドピアノ。美しい自然に囲まれたその場所で、古ぼけた鍵盤を熱心に叩く一人の少年がいた。――


 こんな印象深いエピソードから始まるストーリー漫画「ピアノの森 」は、人気漫画家・一色まことさんの作品です。境遇も演奏スタイルもまったく違う2人の少年がお互いに影響しあい、ピアニストを目指して懸命に努力していく姿を描いています。


 主人公の小学5年生・一ノ瀬海(いちのせ かい)は、偶然、森の中で見つけたグランドピアノを幼い頃から弾いて、音楽の才能を気がつかないうちに育んでいました。実は、森のピアノは学校の音楽教師・阿字野 壮介(あじの そうすけ)がかつて大切にしていたものでした。天才ピアニストとして活躍していましたが、交通事故で左手の自由を失い、ピアノを手放しました。しかし、このピアノは、海以外の誰が弾いてもなぜか音を奏でることができないのです。


漫画写真

(© 一色まこと/講談社)

 ある日、海のクラスに雨宮修平(あまみや しゅうへい)という名前の転校生がやってきます。彼は、ピアニストの父と同じピアニストになるべく、小さいころからピアノを習っています。他人の目を常に意識して優等生のピアノを弾いてきた修平は、海の弾くピアノの音――自由で力強く、聞く人の心を慰める素晴らしい音楽に驚き、大きな影響を受けることになるのです。


 2007年夏には劇場用アニメ映画として公開され、ますます注目を浴びつつある「ピアノの森」。クラシック音楽の厳しい世界で、自分だけの演奏を見つけようと苦しみ、その中で何かをつかんでいく少年たち。彼らの姿は、読む人に「夢の実現を目指して頑張る気持ち」を伝えてくれるのです。


(2007年10月更新)