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流行通信

天保異聞 妖奇士
(てんぽういぶん あやかしあやし)


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主人公の竜導往壓とその仲間たち((c) 會川昇・BONES/毎日放送・アニプレックス・電通)

 天保14(1843)年。大ききんや民衆の暴動、幕府の財政危機など、人々の不安をかき立てるできごとがたてつづけに起きた江戸を舞台に、おそるべき異界の獣「妖夷(ようい)」たちと戦う「奇士(あやし)」たち。そんなまか不思議な世界を描く新作アニメ「天保異聞 妖奇士」が2006年10月から放映され評判を呼んでいます。


 当時の日本は全国的なききんで、飢えた農民が村を捨てて江戸へ流れ込み、一揆や打ち壊しが起こっていました。幕府も財政が貧しく、「天保の改革」と呼ばれる政策で庶民の生活を厳しく取り締まりますが、人々の反感が高まるばかり。そんな不安定な社会を、諸国にひそむ異界の獣「妖夷」が襲うのです。この骨肉を持つ妖怪に立ち向かうのは、「蛮社改所(ばんしゃあらためしょ)」と呼ばれる秘密組織のメンバー「奇士(あやし)」たち。武士、蘭学者、神主、山の民、男装の少女など、さまざまな奇士がそれぞれの武器で「妖夷」と立ち向かい、最後には見事に退治した「妖夷」を肉として食べてしまいます。


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特別な力でと妖夷と戦う奇士((c) 會川昇・BONES/毎日放送・アニプレックス・電通)

 この不思議な物語の主人公は39歳の浪人・竜導往壓(りゅうどう ゆきあつ)です。彼は「漢神(あやがみ)」という特殊な技で「妖夷」と戦います。これは、「妖夷」の名前を明らかにし、名前の漢字が持つ意味をこの世に引き出す能力なのです。3000年もの昔から伝えられた漢字の、古来から伝わる本当の意味を明らかにすることで、漢字に宿る様々な武器―斧や刀などを引き出し、「妖夷」を退治します。


 漢字はそのルーツをたどると、紀元前14世紀、中国の古代国家・殷(いん)で使われていた「甲骨文字」までさかのぼります。これは神官が王のまつりごとを占い、その結果を亀の甲羅などに刻み込んだ呪術的な文字。たとえば「父」という文字は、身分や地位を示す特別な斧を手に持った人の姿を描いたもの、「雲」という文字は雲のたなびく下に竜が尾を巻いている姿として描かれています。


 アニメで実際に使われる漢字の意味は、甲骨文字の研究でもっとも有名な故白川静立命館大学名誉教授の学説から引用しているという本格派。アニメを楽しみながら、漢字の成り立ちも勉強できるというユニークな時代劇アニメなのです。


(2007年2月更新)