「音楽を、もっと身近に感じたい」―。日本では、そんな誰もが持っている音楽への思いや、自由に音楽を奏でてみたいという憧れを実現できる面白くて不思議な演奏機器が次々と開発されています。遠く離れた場所で同時に楽器の生演奏が楽しめる遠隔(えんかく)演奏システムや、感じたままの音楽をその場で作り出せてしまう楽器のおもちゃなど、新たな音楽体験の世界が、私たちの目の前に広がっています。
世界中でエルトン・ジョン・ライブ
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ヤマハ株式会社のリモートライブ技術を用いたライブイベントの様子=株式会社共同通信社のホームページの画像から
2013年1月、米国カリフォルニア州アナハイム市で開かれたエルトン・ジョンのコンサートを世界11カ国で同時に楽しむイベントが、東京やオーストラリア、イギリスなどで催されました。現地時間午後11時過ぎにライブがスタートすると、ミュージシャンがいない23会場のステージに設けられたピアノが、透明人間が弾いているみたいに生き生きとメロディーを奏で始めました。スピーカーからの歌声と、無人ピアノの響きは、大画面の映像とぴったり合わさって、まるで目の前でエルトン・ジョン本人が演奏しているかのようでした。

このイベントは、日本の大手楽器メーカーが、映像・音声にあわせて、演奏の情報をたくさんの場所に届けることができる画期的な新システム「リモートライブ」によって実現しました。実際に演奏するピアノ側に取り付けたセンサーが、鍵盤(けんばん)やペダルの動きを正確に読み取り、その情報をインターネットで送信し、離れた場所にあるピアノによって自動演奏する仕組みです。
これまで離れた場所に演奏の様子を送る時には、ビデオ映像と演奏データを音を別々に送るのが一般的でしたが、受け取る側で映像と自動演奏の音をぴったりと合わせるのが難しく、演奏が一度合ったとしても途中でズレてしまうような問題がありました。ライブでは、ビデオ映像と自動演奏を同期する独自の技術によって、この難問も見事に解決して見せました。
この演奏システムを使えば、好きな時にミュージシャンの生演奏を、いつでもどこでも楽しむことができます。離れた場所や別の国にいる先生から音楽教育を受けることだってできるようになるでしょう。