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©KYUSHU ELECTRIC POWER CO., INC.
IHアイロンの試作品です。九州電力総合研究所では「小さな子どもがアイロンでやけどをする事故を防ぎたい」との思いで、約2年かけてこの熱くならないアイロンを開発しました。
日本の九州電力総合研究所が驚(おどろ)きの新発明に成功しました。それは今までの世の中にはなかったアイロンで、熱くならない「IHアイロン」です。 最初のアイロンは約2000年前に中国で発明されたといわれています。それは炭火アイロンで、19世紀までのアイロンはすべて炭火アイロンでした。もちろん今日では、ほとんど全てのアイロンが電気アイロンです。炭火にしろ電気にしろ、今までのアイロンは全て熱くなるものでした。しかし、今まさに、歴史上初めて、熱くならないアイロンが出来ました。
ではなぜ、「IHアイロン」は熱くないのでしょうか? その秘密はアイロンに使われているIH(電磁誘導(でんじゆうどう)加熱)技術にあります。IHは、コイルに電流を流すと発生する磁界(じかい)によって、IHに面する金属を発熱させる仕組みです。従来のアイロンと異なり、本体そのものは熱くなりません。IHアイロン本体が金属製のIHアイロン専用台に接触すると、その部分が発熱し、アイロンとしての機能(きのう)を発揮(はっき)します。IHは長い間、製鉄(せいてつ)に用いられてきた技術で、最近では調理器などに利用されています。IH調理器は調理の際、調理器自体は熱くならず、接した金属鍋などが発熱するため、火を使わず安全に調理できます。
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内部のコイルに電流が流れると磁界が発生します。調理器の表面は触れても熱くありませんが、この上に金属鍋をのせると鍋の底面に渦(うず)電流が流れます。その結果として、鍋自体が熱を発するのです。
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ちょうどIH調理器をひっくり返したような仕組みで、アイロンの中にコイルを組み込んでいます。金属製の専用アイロン台とアイロンの接した部分が発熱することで、アイロン本体が熱くなくてもアイロンがけができるのです。
この革新的な「IHアイロン」は、日本のメーカーによって商品化がすすめられています。電源を入れると、約5秒以内でアイロン台の温度が150℃まで上昇し、予熱不要でアイロンをかけることができます。アイロン専用台には冷却ファンが付いていて、電源を切ると10秒もかからないうちに約60℃まで冷めるのです。
「IHアイロン」は、「小さな子どもがアイロンでやけどをする事故を防ぎたい」との思いで安全性を追求したものです。そのコンセプトが高く評価(ひょうか)され、子どもたちの安全・安心に貢献(こうけん)するデザインを表彰(ひょうしょう)するキッズ・デザイン賞(2009年度第3回・リサーチ部門)を受賞しました。テレビや新聞でも報道(ほうどう)され、「熱くないアイロン」として話題を呼んでいます。
©KYUSHU ELECTRIC POWER CO., INC.
現在検討中の試作モデルは、従来のアイロンにはない斬新(ざんしん)なデザインになっています。
(2010年2月更新)