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ゴジラと特撮


「ゴジラ」の特撮はここがすごい・おもしろい

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特撮監督の神谷誠さん(東宝株式会社)

 「ゴジラ」シリーズの最大の見せ場、破壊のスペクタクルを本物らしく見せるために使われた特撮技術について、シリーズ6代目の特技監督・神谷誠(かみや・まこと)さんに教えてもらいました。


 特撮では、すべてのカット分の絵コンテが用意されます。絵コンテとは、各場面に何がどのように映っているか、それをどこから見ているかが描かれた絵の台本ともいえるもので、これをもとに撮影方法を検討していきます。


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屋内での撮影-山間部(東宝株式会社)


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屋内での撮影-市街地(東宝株式会社)

 光の変化や風雨などの自然条件に左右されず、さまざまな環境を人工的に作ったり操作したりできるので、撮影場所はスタジオ内がほとんどです。しかし、下から仰ぎ見るようなシーンは、高度に限界のない屋外で本物の空を生かして撮影されます。また、大がかりな爆発など危険が伴う撮影も屋外で行なわれます。


 映画の中では体長60mのゴジラも、実際の撮影現場では2.2m。このサイズに合わせ、破壊される街を精巧なミニチュアセットで表現します。ミニチュアを本物らしく見せるためには良い照明も必要で、撮影用ライトの光の方向や角度、種類、バランスには大変注意します。また特撮の場合、カメラスピードを速めたり、ミニチュアセットの手前から奥までピントが合うようにするためには、通常より多くの光量が要求されるうえに、後から合成されるゴジラの放射能や爆発の照り返しなど、その場にない物にも光を合わせなくてはならないので、非常に苦労するそうです。


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破壊された町並みをスタジオ内に作る。(東宝株式会社)

 映画は1秒分の映像を24コマの絵で表現したものなので、カメラスピードも通常は1秒24コマです。しかし、ミニチュア撮影で例えば大爆発シーンを撮るとき、カメラスピードは1秒分が10倍の240コマ以上にセットされます。こうして撮った映像を通常の速さで再現することで、撮影時は一瞬だった爆発もゆっくりとしたスケール感のある爆発に生まれ変わるのです。それでは、すべてを10倍速で撮ればいいのでしょうか? ゴジラは実際にはかなり重いゴジラスーツを俳優が着て演技をしますが、どんなに素早く動いてもスピード感のある動きはできません。撮影シーンやゴジラの動きによって適切なカメラスピードは異なる、というわけです。同一画面に爆発とゴジラの両方が必要な時は、それぞれを異なるスピードで撮影して後で合成することもあります。


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橋から落下するシーンを撮影し、後に橋の映像と合成する。(東宝株式会社)

 その際の合成には、以前はオプチカル・プリンターという機械を使って、背景のフィルムとゴジラや人物などのフィルムを手作業で1コマずつセットしていく方法がとられていましたが、今は「デジタル合成」が主流です。「デジタル合成」とは、撮影したフィルムからスキャナーを使ってデジタルデータを作り、これをコンピューター上で望む画像に仕上げた後、フィルムレコーダーという機械でデータをフィルムに変換するという方法です。デジタル合成によって加工できる素材の数や精度は格段に増し、従来不可能だったことも可能になりました。


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ゴジラとバラゴンの対決シーンの合成映像。


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ゴジラが熱線を吐く様子はCGで作成し合成された。

 ミニチュアやゴジラスーツでは表現がしにくい動きのあるカットは、コンピューターで作画します。ただ、CG(コンピューター・グラフィック)作成も時間を要する作業なので、撮影終了から劇場公開までの期間が短い日本の映画界では、数をこなすのはまだまだ難しいそうです。


 一方、CG全盛のハリウッドでは、「タイタニック」「アルマゲドン」「スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス」でもミニチュアは健在でした。ミニチュアはそれ自体が壊れてしまうものなので、撮影のやり直しがききません。


 爆発や破壊の仕掛けを施すのにも手間と時間を要するので細心の注意が必要なミニチュア撮影は本当に奥が深い技術で、神谷(かみや)監督も、より密度の濃いミニチュア撮影を目指したいと語っています。