「フリーズドライ」のコーヒーやスープといえば、乾燥した肉や魚、野菜などをお湯でもどして食べる、味気ないインスタント食品を思い浮かべていませんか。日本では、この優れた技術を使って、いつでも、どこででも食べられて、おいしい「ごちそう」の開発が進んでいます。日本で作られたおいしいフリーズドライ食品は、世界各国の食卓はもちろん、南極や宇宙ステーションでの研究活動にも役立っています。
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南極観測隊用に作られたフリーズドライ食品。栄養、色、形などをそのままに、4分の1の軽さを実現した ©「極食」
南極観測を支えた味
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テントの中でフリーズドライ食品を調理して食べる南極観測隊員たち(第53次南極地域観測隊セール・ロンダーネ山地調査班提供)
隊員たちが毎日食べたいおいしい料理と言えば、作りたての家庭料理でした。しかし、作りたての料理をそのままフリーズドライ食品にすることは、当時の食品メーカーでは考えられないことだったといいます。料理をまるごと乾燥させた場合、野菜や肉、魚など具材ごとの乾き方や、お湯を入れた時のもどり方などが違うため、誰も試したことがないというのが理由でした。隊員たちは、フリーズドライの技術者たちと協力して、料理に使う材料それぞれの性質を分析して、料理にした時の乾き方を予測し、肉の厚さなど調理方法を工夫しながら、100種類以上のおいしいフリーズドライ食品を作り上げたのです。
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南極観測隊用のフリーズドライ食品を作った日本エフディ社のフリーズドライ釜
それらの料理は、予想した以上においしく、日本人だけでなく、インドや南アフリカから参加した隊員たちにも大好評でした。南極生活の楽しみとなったフリーズドライ食品は、安全な活動を支える大きな柱となりました。