日本は世界でも地震の多い国の一つです。2011年3月11日に発生した東日本大震災では多くの尊い生命が失われました。大震災後、日本ではそうした地震による被害を少なくするため、地震が起こる仕組みの研究を一層、進めています。揺れや津波を1秒でも早くキャッチし、人の命や家などの財産が奪われない国にするためです。
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世界で最も深く潜ることができる有人潜水調査船「しんかい6500」。3人が乗船できる。地震研究だけでなく、深海生物の調査などでも活躍している ©海洋研究開発機構
深海を探る「ちきゅう」の掘削
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日本周辺の4つのプレート。矢印の方向にプレートが動き、地震活動が起きる。
図中1は東日本大震災の震源域とみられる日本海溝の掘削の掘削地点。
図中2は今秋に掘削が始まる南海トラフの掘削地点。
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「しんかい6500」が東北地方太平洋沖の「日本海溝」で発見した海底の亀裂(きれつ)。東日本大震災の際にできたと見られる。水深5・3?で2011年8月に撮影©海洋研究開発機構
日本ではなぜ、地震が多く起こるのでしょう?それは、地球の表面を覆(おお)っている硬い岩盤(プレート)の合わせ目が日本周辺に集まっているからと考えられています。地球を包む大小十数枚のプレートが、マントルという軟らかい層の上を動き、境界で擦れ合って地震を起こすのです。
日本の東北地方の沖約200?の太平洋の海底には、「日本海溝(にほんかいこう)」と呼ばれる巨大な谷のようになったプレートの境界があります。この海溝は、深いところで水深8?、長さは南北に約800?もあります。東日本大震災は、この付近で発生しました。地震の5カ月後には、世界一の潜航能力を持つ日本の有人潜水調査船「しんかい6500」が水深5・3?まで潜り、大震災の影響とみられる大きな亀裂(きれつ)を発見しました。
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巨大地震発生域の探査に挑戦する深海掘削船「ちきゅう」 ©海洋研究開発機構
この海溝近くでは現在、日本の深海掘削船「ちきゅう」が、どのように地震が起きたのかを調べるため、海底を掘る作業を進めています。水深7?の海底までドリルを伸ばし、さらにそこから約1?も岩盤を堀っています。地震が発生した地中の温度を測り、その温度から、地震が起きた時の摩擦熱を計算して、どんな地震活動があったのか分析する研究です。
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「ちきゅう」のドリルをつり下げるやぐらの上から見下ろしたヘリデッキなど。
海面から約100?の高さにある ©海洋研究開発機構
「ちきゅう」は、人類史上初めてマントルや巨大地震を発生させるプレート境界まで掘り進める能力を持った科学掘削船です。石油掘削技術を科学研究用に初めて導入しており、穴を崩さずに、水深2.5?の海底から、さらに7.5?の地底まで掘ることができます。
「ちきゅう」は今秋、日本の東南の太平洋で海底から深さ7?のプレート境界を目指して掘削を始めます。ここは「南海トラフ」と呼ばれている場所で、100―150年に1度の周期で大きな地震が発生すると考えられています。誰も触れたことのない地底で、過去にどんな地震活動があったのでしょう? この研究には25カ国の研究者が参加し、地震の発生メカニズム解明に取り組みます。