1998年6月、NASAが打ち上げたスペースシャトル「ディスカバリー」には、従来より約4tも軽い燃料タンクが搭載された。新素材のアルミニウム・リチウムを使うことにより軽量化が実現したのだが、この素材を加工した工作機械は、松浦機械製作所が作ったものだ。
 松浦機械製作所は福井市にある工作機械の製造会社。生産台数の約8割を欧米に輸出し、アメリカの航空宇宙機器メーカーにも納入している。それまでの実績が買われ、新型燃料タンク製造に採用された。
 「アルミニウム・リチウムは強度を持たせながら、薄く、軽く仕上げることができる材料です。しかし、加工する際に生じる摩擦熱で材料が変化してしまうため、削る方法がありませんでした。そうした変化を起こさせることなく、高精度な加工を可能にしたのが超高速回転のマシニングセンタです」と松浦正則社長は話す。
 マシニングセンタは、鉄、アルミなどの材料を加工する工作機械。数十本もの工具を備え、切る、削る、穴をあけるなど、1台でさまざまな加工ができる。今までの高速マシニングセンタは1分間に約2万5000回転で削っていたが、松浦製のものは、3倍の7万5000回転で削ることができるようになった。あまりに回転速度が速いので、熱による変化が起こる前に材料を削ることができる。この超高速回転に耐えられる主軸を開発したことで、新素材の加工を可能にした。
 1970年代後半から高速加工に取り組んできた技術力が、宇宙開発を陰ながら支えている。

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